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今度は、毎日新聞で環境問題の取材を長年担当され、本もたくさん書いておられる小島さんに、日本の海洋汚染の現状と課題、そして、今後汚染防止に必要なことを、これまでの取材、経験から、お話しいただきたいと思います。

 

(小島) 私はあちこちに行きますが、陸奥湾だけではなく、「水がきれいだ」とは、瀬戸内海でも伊勢湾でも、最近はどの漁師さんも県の水産関係者も言います。ところが、水はきれいになりましたが、先程から何回も出ているように、底はどうなっているのか。海がいいかどうかということは、水がきれいかどうかももちろん重要なのですが、物理的な構成が重要なのです。

人間でも、お金はあっても快適に住む家がないとダメですね。お金はあるけど、人体の健康度は悪くなっているのではないかという声があります。

 

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三河湾と伊勢湾のアマモ場(1955年)

 

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全滅したアマモ(1970年)

 

その物理的な例のひとつが、藻場です。

例として、伊勢湾と三河湾の地図(左下図:小島正美著『滅びゆく海の森』より)をお配りしましたが、これを見ると非常にわかりやすいです。藻場の代表的なものにアマモという海草があります。食べると甘いからアマモと言われたという語源があります。伊勢湾と三河湾の黒く塗りつぶした所にかつてアマモがありましたが、わずか20年足らずでほとんどゼロになってしまいました。

実は、知多半島の常滑市沖にまだ160ヘクタールくらいの藻場が残っていたのですが、そこはちょうど埋め立てにもってこいの浅い所なのです。ですから、そこが中部国際空港で埋め立てられてしまいました。さらにアマモが減ってしまうので、漁師さんたちは当然反対をしましたが、できてしまうという状況があります。この状況はたまたま伊勢湾と三河湾ですが、アマモの状況はどこでも同じです。瀬戸内海の岡山県もかつてはたくさんありましたが、今は全然ないということです。

実は陸奥湾にもアマモはあり、陸奥湾にあるアマモを守っていくことは非常に重要だと思います。陸奥湾はまだ比較的残っている方ですが、先程も内輪で話していましたら、やはり減っているということです。藻場はマダラなどの稚魚の育成場所になります。ですから、アマモは絶対に守らなければならないのです。

先程、貝が水を浄化しているという話がありましたが、アマモも植物ですから、当然水を浄化しています。そのような面でも守っていかなければならないということです。

私は幅広く環境問題をやっていて、海を取材し始めたのは14〜15年前で、それまでは何も知りませんでした。取材を始めて少し経った頃、たまたま北海道で海の人たちが山に登って木を植え始めたということを取材しました。海と森との関係は非常に重要だということで、当時ニュース価値もあると思い、色々と報道しました。そして、その動きは全国へ広がっています。ほとんどの県で今、漁師さんたちが山に登って木を植えています。

 

 

 

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