日本財団 図書館


023-1.gif

図2.1.12 陸奥湾における密度の変化(σt)

 

また、西湾と東湾ではかなりプランクトンの生産量が違ってきます。

西湾では、春先まで上下の差があまりないので、上と下がぐるぐると、ゆっくりゆっくり混合されて上に肥料を供給してくれます。

東湾では、太陽が照って来ると上の方が温められ、温度躍層がどんどんできます。つまり、上と下の混合は、春先にはすぐになくなってしまいます。そのかわり、秋に急に冷やされると、また上下の混合が起こり、下から肥料が供給されます。

このように、陸奥湾の場合、全般的に、春には西湾の方がプランクトンの生産が高く、秋になると東湾の方が高くなるという傾向があります。

それによってホタテの身入りも違ってきます。上磯、青森の西湾のものは、春先、全般的に身入りがいいです。ところが、秋になると逆転し、上北、下北の東湾の方が、西湾よりも身入りがよくなります。

ホタテというのは、陸奥湾の海洋構造、プランクトン生産量にかなり規定されています。

 

陸奥湾で今までホタテ養殖がうまくできたのは、それほど海洋が汚染されず、うまくプランクトンの生産ができたためだと思います。

しかし、半閉鎖的な湾ですから、一度汚染されると回復するのにかなり時間がかかります。

そして、貝類の特徴として、今問題になっている環境ホルモン、重金属などを蓄積しやすいです。陸奥湾が環境ホルモンや重金属にかなり汚染されると、ホタテ産業もだめになってしまいます。

 

また、貝殻は今のところ捨てるだけになっています。貝殻を電子顕微鏡で拡大すると、方解石のように炭酸カルシウムが結晶状態になっています。貝殻は今はただ陸に揚げられて捨てられているだけですが、これが役立っているのです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION