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基調講演2] 「陸奥湾のほたて養殖と漁場環境」

小坂善信(青森県水産増殖センター ほたて貝部長)

 

私は、ほたて貝部に属し、ホタテのことしかやっていませんが、それに関することはかなりやっているつもりですので、今日はそのホタテに関して、そして陸奥湾とホタテの関わり合いについてお話しします。宣伝となりますが、いかにホタテが陸奥湾の漁場環境を利用し、陸奥湾の環境をよくしているかということを述べたいと思います。

ただ、陸奥湾は半閉鎖的でかなり汚染されやすいため、いかにバランスをとって、ホタテをやっていくかが重要となっています。

今回はホタテ養殖の生い立ちと、ホタテ養殖が陸奥湾の環境にどのように関わっているかを述べたいと思います。<以下、プロジェクター併用>

 

◆ ホタテ養殖の生い立ち

 

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図2.1.7 青森県の魚種別漁獲量(1998)

 

図2.1.7は、青森県の漁業生産量を魚種別に見たものです。青森県は今イカが主流で、32%、大体30万トンの1/3を占めています。次がホタテで、大体9万〜10万トンです。イカにはアカイカ、スルメイカなど、色々な種類が交じっているので、1種類としては、青森県ではホタテが一番です。

ホタテの養殖技術はこの陸奥湾で昭和40年代中盤に開発されました。それからホタテの生産量はどんどん伸びてきています。陸奥湾が日本のホタテ養殖の発祥地と言われているのは、この技術が陸奥湾だけではなく、北海道、岩手、宮城全部に伝わっているからです。その他に世界にもこの技術が伝播して、世界の発祥地ともなっています。

このように、ホタテ貝の養殖というのはまだせいぜい30年くらいしか経っていません。それなのに、今では9万〜10万トンと、生産が急激に伸びてきています。陸奥湾の面積約1,660km2の内、約500km2、陸奥湾の1/3くらいでホタテの養殖が営まれています。

 

ホタテの養殖はどのようにやるものか、漁師さんは毎日見ていますが、普通の人はなかなか見たことがないと思います。

まず、採苗器で種を取ります。青森市奥内の工藤さん(確か、市制70周年で市長賞受賞)が開発されたものは、タマネギ袋にスギの葉を入れていました。今は刺し網を入れ、これにホタテがつき、種が取れるようになって発展してきました。

その後、パールネットという四角に入れたり、貝に穴を開けてテグスを通してロープに結わえたり、丸かごという長い10段式のかごに貝を何枚ずつか入れます。かごは1本のロープに全部吊されます。長さは個人毎に違いますが、200mくらいのロープに何百連か吊します。

垂下式というのは中層に置くところがミソです。ホタテは元々底層に棲んで、海底で生活していたのですが、それを中層に持っていったのは、ここが一番餌が豊富にある所だからです。施設の一番上に行くと、時化でやられたり、施設がもたないということで、この中層に維持することになったのが、ホタテ養殖が成功した原因です。

 

 

 

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