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そこで、気象の影響について解析したところ、東風が吹くと、平舘側に湾内水が吹き寄せられて西岸表層部で湾外に流出する流れが生じ、逆に西風が吹くと脇野沢側に流入する流れが発生することがわかりました。

 

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図2.1.5 湾口部流速と気象変動(1995年6月)

 

図2.1.5は平舘の前面(湾口部西寄り)で測られた流速と、風、気圧変動の関係を調べたものです。気圧変動としては八戸と深浦の気圧差の変動を示しています。この観測結果を見ると、湾口部の流れは、太平洋と日本海の気圧の影響、さらに陸奥湾を吹く風と非常に良い相関をもっているといることがわかります。つまり、気象の影響を顕著に受けているのです。さらに、太平洋と日本海の潮位変動や、日射や降水による湾内水の水温構造にも、湾口部の水交換は影響されているのです。

最後に、シミュレーションの結果(図2.1.6)をご紹介します。

 

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図2.1.6 流況の計算結果

 

陸奥湾内部だけでは流れの状況を十分に再現できないために、津軽海峡も計算領域に含めて計算を行っています。

太平洋の水位が相対的に低くなると、津軽海峡の流れが速くなり、竜飛岬の東方では渦(循環流)が発生します。この、循環流の強さは、日本海と太平洋の潮位によって決定され、水位差が大きいときには、その影響域が仏ヶ浦の方にまで及びます。その結果、湾口部の流れも影響を受け、複雑な流動パターンを示すことがわかってきました。アニメーションでその流動を見てみると、竜飛岬で発生した渦が東方に移動し、湾口周辺の流れに大きな影響を及ぼしていることがよくわかります。

さらに、風を吹かせたり、低気圧を通過させるなど気象擾乱を加えたシミュレーションを行うことで、未だ明らかにされていない突発的な流動の発生原因についても解明できるのではないかと考えています。

湾内の流れの様子が精度良く再現できれば、流れに水質(物質)やプランクトンを乗せた計算を行うことによって、陸奥湾の水環境の現状把握と将来予測が可能になります。現在、その方向で研究を進めているところです。

 

 

 

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