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◆ 陸奥湾の流動構造解明へ

漁業に関わる問題をお話ししましたが、水温がどのように変化するのか、水交換がどのようになされるのか、プランクトン(栄養塩)がどのように供給されるのかといった問題を明らかにするには、陸奥湾の流動構造を把握する必要があります。

陸奥湾の水はどこからきているか。陸域(周辺河川)から供給されるもの、陸奥湾への直接降雨・降雪、そして湾口からの津軽暖流の流入によっています。そして、湾口部での流入流出は、時々刻々の潮位変化によって生じています。

青森港で測られている潮位をみると、干満の差はせいぜい50cm程度です。普段はこの僅かな干満によって水交換がなされているのです。湾口部(平舘海峡)で50cm/s以上の流速が生じることもありますが、湾内では数cm/sの流れしか起こらず、潮汐だけでは湾内の物質はほとんど湾外に出ていかないことがわかります。

 

恒常的な流れや循環が陸奥湾に存在するのかどうか。湾内の流速が小さいために観測データからこの答えを見いだすことはとても難しいのです。

 

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図2.1.2 推測される恒流(残差流)

 

これまで、陸奥湾では図2.1.2に示すような流れが存在していると考えられていましたが、その検証は未だなされていません。

水交換についても同様で、西湾と東湾に分けて考えた場合、水交換には西湾で1〜3か月、東湾で2〜4か月かかるという研究結果も報告されていますが、その詳細は明らかになっていません。それは季節によっても変化し、また、先ほど述べましたように気象状況によって短期間に大きな水交換がなされている可能性もあるからです。

 

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図2.1.3 陸奥湾のCOD経年変化

(青森県HP:類型Aより)

 

図2.1.3は、水質のひとつの指標であるCODの経年変化を示したものです。CODは化学的な酸素要求量のことで、水の汚れ具合を表す量です。どの地点も基準値の2以下の値で、陸奥湾はとてもきれいな水質状態にあることがわかります。ただし、私たちが以前調査を行った青森市前面海域では若干水質が悪い地点もありましたが、それでも他の閉鎖性水域に比べれば良好な状況でした。窒素やリンも同様に低い値を示しています。

このきれいな陸奥湾の水質を守ろうと青森県が策定した「むつ湾アクアフレッシュ計画」では、CODの目標値は1.6です。今の陸奥湾はきれいな状態でバランスしていますが、閉鎖性が強いので汚濁傾向が強まると環境を修復するのは難しく、また、かなりの時間を要します。そのため、基準値より低い値に目標設定する必要があります。

 

 

 

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