司会:本日の講師は池野功さんです。昨年のことになりますが、10月22日に海賊の襲撃を受け、その後ボートで漂流し、18日目にして乗組員とともに救助された“アロンドラ・レインボー号”の船長です。乗組員がまだ無事に見つかっていない船もある中、全員で奇跡的に生還を遂げた池野さんの貴重な体験を伺いたいと思います。それでは池野さんよろしくお願いします。
池野:ただいま紹介にあずかりました池野と申します。よろしくお願いいたします。本日、私がここに参りましたのは当船の科学館、「うみ・ふねセミナー2000」で企画されました「海賊その歴史と実像」が7月から始まり、最終回の6回目ということで、約1年ぐらい前に起きました海賊事件の、実際の経験者ということで参りました。
最初にお話ししたいのは、起きました場所です。このパンフレットに載っていると思いますが、ここの地図をご覧になっていただきたいと思います。おわかりと思いますが、東南アジアの全図のようになっています。シンガポールがわかると思いますが、南のスマトラ島の、中央部に近いクアラタンジュンの沖で起きた事件です。ここに行く前は、ボルネオ島の東側、スラウエシ島のウジュンパンダンといういうところです。
私どもの船はここで鋼材、主に鉄のコイルを上げまして、夜には出港したのです。その1日ぐらい前に次の荷物は、クアラタンジュンでアルミインゴットを7000トン積むので、終わったらそこへ向かえという指示を受けたのです。その時点での私はクアラタンジュンに行ったこともないし、どこかもわからないので、一応海図などを調べて、ここだということを確認してからそちらに向かいました。
着いたのは記憶では10月17日、朝6時ぐらいだと記憶しています。日曜日だったものですから、入港して代理店とVHFで連絡したところ、その日は沖で待って翌月曜日、10月18日の朝に岸壁につけて積荷を始めるということで沖にいました。
ご存じのとおりインドネシアの港というのはほとんどどこの港でも、海賊というには大げさすきるのですが、小さいボートでやって来て、すきがあれば何かとっていこうというこそ泥はどこにでもいます。