司会:本日の講師であります小島敦夫さんは、以前、日本を代表する船会社の日本郵船に勤務されていまして、乗船中に航海記録集を出され、以来海洋ジャーナリストとして活躍されています。
本日は「古代から近世までの海賊列伝」ということで、皆さまよくご存じの海賊の様子、あるいは生活の様子をお話ししていていただく予定です。それでは小島さん、よろしくお願いいたします。
1. 海上権力と海域支配の関係―海賊の発生と発展―
小島:ご紹介いただきました小島です。「海賊セミナー」のトップバッターということで、セミナーの後のほうには、いろいろなタイプの時代時代に沿った予定が組まれていますので、私は列伝として、歴史の中に出てくる海賊のプロフィールをみなさんにご紹介する役です。
海賊行為というものの歴史的流れ、これからのセミナーで出てくるアジアとかカリブ海とか、海賊の実態が歴史的にどういう位置付けになるのであろうかという基本的なことを、まず予備知識としてお話ししたいと思います。
一口に海賊と言ってもいろいろありまして、私自身も船員時代に海賊の被害にあったことがあります。といってもたいした海賊ではありません。ペルシア湾の最奥にシャトルアラブという川があります。歴史で必ず習うチグリスとユーフラテスの二つの川が一つに合流して、このシャトルアラブ川になってペルシア湾に注ぐのです。イランとイラクの国境を成しています。
往時から現在までも都としてある、イラクのバクダッドとかイランのテヘラン向けなどの貨物を積んで行くと、その川を6時間ぐらいさかのぼった場所が、荷揚げの桟橋になるのです。イラクのバグダッド向けの荷揚げはバスラで、イランのテヘラン向けの荷揚げはホラムシャハルの桟橋です。荷揚げ桟橋は川のほとりに船が3隻ぐらい着くといっぱいになってしまう上に、クレーンの設備がなく、人力の荷揚げですから、時間がかかります。