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2. “飛鳥(あすか)”

平成3年(1991)10月28日、日本郵船の新しい客船“飛鳥”が三菱重工業長崎造船所の岸壁を離れました。“飛鳥”には戦前の客船黄金時代の伝統を引き継ぐという想いがこめられていて、その大きさも、太平洋戦争勃発の年に三菱造船長崎造船所で建造された、当時日本最大になる予定の“橿原丸(かしわらまる)”を意識して造られています。(“飛鳥”・28,717トン、“橿原丸”・27,700トン)。“橿原丸”は、進水前に海軍に買い上げられ航空母艦“隼鷹(しゅんよう)”と改名して竣工(しゅんこう)されたため、客船としての姿は誰も見ることのできなかった幻の客船なのです。このようなことから、“橿原丸”が“飛鳥”の基準とされたのです。かつての郵船の客船がそうであったようにオープンスペースを広くとるための、なだらかな船尾部と広いプロムナードデッキに、戦前の名船のゆったりとした感じが復刻(ふっこく)されています。さらに船体にはスマートさを演出するための金と青のラインが引かれていますが、青い方はジャパンブルーとよばれる日本の伝統色で、藍染めの青・濃縹(こきはなだ)と呼ばれる色です。船名の“飛鳥”も、日本文化の黎明期(れいめいき)である飛鳥時代に因み、新客船時代の黎明期を担うものとして名付けられました。因みに、おなじ日本郵船の客船でありながらバハマ船籍の“クリスタルハーモニー”のファンネルには、郵船の伝統・赤の二引(にびき)がありません。日本船籍の客船“飛鳥”のために大切に取っておかれたのです。

 

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