No.12/36
海をひらくIII
現在、海底面調査、水産調査、海底資源調査には“しんかい6500”のような有人潜水艇(ゆうじんせんすいてい)や、海上の母船とケーブルでつないでリモコンで遠隔運転(えんかくうんてん)する“かいこう”のような無人探査艇(むじんたんさてい)、そして遠隔操縦式の水中ロボットなどが活躍しています。この遠隔操縦式の水中ロボットは、母船とロボットとが制御用(せいぎょよう)のケーブルでつながっていて、船上から人間が操縦するようになっていて、調査の必要に応じて新たな調査機器が搭載でき、観測結果もすぐに母船上で得られるので大変便利な機械といえます。
しかし、実際に少し広い範囲の海底を走りまわりながら調査しようとすると、母船もロボットといっしょに動く必要があり、また、潮流(ちょうりゅう)の影響でケーブルが引っ張られることもあって、使いこなすのには高度な操作技術が必要となります。さらに、調査海域が深くなればなるほど、母船とロボットの協調行動の問題のほかに、使用するロボットが複雑で大型のものとなるため、運用には大きな母船が必要となり経費も大変なものとなってしまいます。
1. 自律(じりつ)水中ロボットの開発
これまで母船と水中ロボットをむすんでいたケーブルをなくして、海中を自由に走り回り、広い範囲を調査することを可能にしたのが自律水中ロボットです。
現在、自律水中ロボットは世界中の海洋関連研究機関で研究開発が進められていますが、平成10年(1998)日本のKDD研究所は、民間で始めて実用化レベルの自律水中ロボット“アクア・エクスプローラー2”を開発しました。
このロボットは、センサ、コンピュータ、バッテリーを内蔵し、センサ情報に基づいて自分で判断しながら与えられた仕事をこなします。
したがってこのロボットを運用する場合、人間は潜航(せんこう)前にロボットに作業内容を指示するだけですみ、ロボットは潜航した後、与えられた手順で自動的に調査を行います。ケーブルを無くしたことにより、ロボット本体や船上装置は大変コンパクトになるため、十数トンの小型船で扱うことができ、また、操縦作業が無いため、熟練したオペレータの必要もなくなりました。その結果、運用経費は、これまでの水中ロボットに比べ大変安くなります。