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それでも倫理的な教育、何らかの道徳教育は学校で必要であると思います。ただ、政府の統制による道徳教育は避けなければなりません。

ですから私たちのチャレンジとしては、教育の専門家、専門職が責任をもって何らかの倫理的な内容を、マイナスの意味合いを取り除いて、教育のプロセスの中に取り戻す必要があります。初等教育・中等教育では、倫理に関わるマイナス面ばかり考えられてきているため、内容的にはどの国でも崩壊状態にあると思います。ですから日本で倫理の原則を初等教育や中等教育にもう一度取り戻すときに、それが政府の強制ではない形でできるようにすること。これが大きな課題だと思います。

 

稲盛 日本の場合には不幸にして明治維新から第二次大戦の終戦までの間に、宗教や道徳、倫理というものがすべてその当時の為政者に利用されたわけです。ちょうど富国強兵策の中で日本のナショナリズムが非常に強くなって、そのために軍国主義への道を一瀉千里(いっしゃせんり)に走ってしまった。そのときに多くの宗教が当時の政府に協力をしましたし、また政府は宗教が説く道徳、倫理を自分たちの都合のいいように、国を治めるのに都合のいいように利用したのです。そのために戦後、反動的に宗教というものに対する拒否反応が生まれ、また日本に古来からあった道徳、倫理は全面的に否定されました。

 

 

 

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