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小谷 今なぜ梅岩かということは、現代と時代が大変によく似ている、また問題点がよく似ているということだと思います。梅岩はこのように言っています。「今の世の中は、暖衣飽食、怠けて逸居することを生きがいとなす。ただ、それだけで何もしないのは禽獣(きんじゅう)に近い」。暖かい着物を着て、たくさんご飯を食べて、怠けて何もしないでいるということは鳥や獣と一緒である。だから自分は人の道を教えているのだということで、教えを説いた最初の言葉にしているわけです。

商人の道については、『都郡(とひ)問答』にいろいろ出てきます。「商人の道を知らざる者は、貧ることを勉(つと)めて家を滅ぼしてしまう。商人の道を知れば、欲心を離れて仁心をもって勉め、道にかない、栄えていくものである。学問の徳はそこにある」ということを言っています。また、「不義を行えば心の苦しみとなる。どうして不義をもって心を苦しむることをせんか」。義理に反したことをすれば、心が苦しくなるだけである。どうして不義をするようなことをして、心を苦しめるもとをつくるのかと。

 

 

 

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