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こういったことは普通は宗教とは考えないわけです。場合によっては特定の形の芸術に非常に献身する、それに固執すると一つの宗教のようなものになるかもしれません。

もう一つ、日本でよく使われている言葉は「教」です。これも古い言葉だと思います。それから「儒教」という言葉です。儒教も仏教や神道と同じように宗教と言いますか、それよりもそれぞれ三つの道と言えばいいのでしょうか。今日、儒教ということを考えるとき、それは宗教ではなく哲学だと言われます。しかし、実際の前近代の時代にはこのような区別はあまり意味がありませんでした。というのも、これらはすべて「道」だったからです。

そして私が特に重要であると思っている問題は、倫理的な意義、つまり生きるということの究極的な意味合いということです。梅岩は「天地の道」と言いましたが、この宗教という言葉はそのような文脈で考えると、例えばキリスト教や仏教という形でとらえるのは狭すぎると思います。特に社会学の分野で考えると、もっと文化的な、幅広い意味合いをこの宗教という言葉から得るべきだと思います。そうすることに意味があるのです。すなわち社会学の分野においては、特定の宗教の教義に関心をもつのではなく、いったい何が意味を与えるのか、いったい何が人生や人性や、社会性に意味を与えるのかということに関心を置くからです。

 

 

 

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