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親子、夫婦、兄弟、姉妹の関係は家族の中でもつべき敬意と支援の基本形と見ることができます。友人関係は、すべての民主的社会が依存すべき基本的な市民の交友関係を表しています。市民の交友関係が存在することによって、大部分の人々は、「ほとんどの人は信頼できる」と感じ、そしてそれがいい社会をつくるための最も安全な基盤の一つだと信じられるのです。

儒教の徳―特に仁と義は、社会のすべての人々、特に貧しい人々、あるいは不幸や災難で困っている人々のために重要な義務を伴うと梅岩はすでに解釈していました。伝統的社会では過酷な自然環境に対して闘ってきたことも多々ありますが、当時の人々は今日のように自然破壊をするような技術的能力はありませんでした。東アジア文化全体では、特に日本文化においては、自然に対する感受性や畏敬の念が強い一方、環境保護という強力な倫理観はありませんでした。この点においては、近代の倫理的認識によって伝統を補わなくてはなりません。

倫理的生活についての梅岩固有の解釈は精神的側面です。これを梅岩は孟子から引用した言葉「性を知る」、あるいは「放心を求む」と表現しています。梅岩にとって重要なことは、単に生き残るとか、富と力を永遠に追い求めるということではなく、人生にはより大きな意味があるということでした。梅岩はこの大きな意味の源を儒教だけではなく、仏教や神道の中にも見出しました。

 

 

 

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