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解決のモデルはない

個人主義の行き過ぎはアメリカ人にとって弊害をもたらしていますが、日本人はその個人主義が十分ではないので、もっと個人主義が必要だということが言えるかもしれません。私は日本人の集団への忠実さとアメリカ人の個人主義の間の完全な中間を発見できれば、本当にいい社会が実現できると考えてきました。しかし残念ながら、個人主義は望んだ量になるまでスイッチを押し続け、適正量になったところでそれを止められるというようなものではありません。かつてアメリカにもあった強力な倫理的背景、地域への義務感に根ざしていなければ、個人主義はあらゆる形の社会的関係と文化的意味を蝕(むしば)んでいくでしょう。ですから、日本人が健全な形でもっと個人主義的になるには、こうした変化のための倫理と社会的背景を注意深く考察する必要があります。これは故小渕首相の懇談会がほとんど目を向けなかった側面です。

つまり、すべての発展した近代社会にあるように、もし日本社会に問題があるとすれば、その解決のために採用できる外国のモデルはありません。

 

 

 

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