日本財団 図書館


しかし、アメリカ型の個人主義で日本の問題を解決できるのでしょうか。なぜならこの個人主義が、アメリカ社会そのものに深刻な問題を引き起こしているように思うからです。

一九八五年に私は四人の共著者とともに、『心の習慣―アメリカ個人主義のゆくえ』(邦訳はみすず書房)を出版しました。この本の中で、私たちは急進的な個人主義、特に個人の利益の追求を第一とするような実用的な個人主義は、アメリカ人の生活に破壊的な影響を及ぼし、聖書に基づく宗教や市民共和主義の概念などの古くからの倫理的概念に取って代わってしまったと論じました。

ロバート・パットナムが『孤独なボウリング―アメリカ社会の崩壊と再生(Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community』という本を出版しています。これは『心の習慣』で述べたことに経験的確証を与えて、また新たな理論を展開しているものです。パットナムは、この三十年間、アメリカの生活のすべての面で「社会資本」が衰退していると言っています。逆に二十世紀の初めの六十〜七十年間は社会資本は増加していたと報告しています。パットナムが言う社会資本とは、いろいろなものを含んだ社会的なつながりです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION