この本の中で、私たちは急進的な個人主義、特に個人の利益の追及を第一と考える実用個人主義は、アメリカの生活に破壊的な影響を及ぼし、聖書に基づく宗教や市民の共和主義の概念などの古くからの倫理的概念にとって代ってしまったと論じました。この同じ年、ロバート・パットナムが『Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community(孤独なボーリング―アメリカ社会の崩壊と再生)』を出版し、『心の習慣』の理論に経験的確証を与えてくれ、新しい理論も展開しました。パットナムはほとんどすべての種類の社会との関係を指して、これを「社会資本」と呼んでいますが、この30年以上の間にアメリカの生活のあらゆる領域でこの「社会資本」が衰退していると述べています。投票、政治への積極的参加、市民としての社会活動への参加(パットナムは本のタイトルをボーリング・リーグの衰退からとっています)、ふだんのつきあい、家族との食事、教会へ通い、信者となり、寄付することなど、こうした社会とのすべての関係が希薄になってしまったと述べているのです。しかし衰退というより変化が起っているのです。社会資本も規範と期待の中にあります。例えば、私たちが社会で礼儀正しく行動すること、ほとんどの人が信頼できること、こうしたすべての手段を手に入れることができるという規範と期待です。
パットナムは世代の変化について述べています。ほとんどの変化要素において、各世代が以前より低年齢化し始め、そして低年齢化したままとなっているというのです。もう一つの重要な変化要素は、テレビの視聴です。各世代の中で、テレビを長い時間見る人は、政治、市民生活、ふだんのつきあい、宗教活動などに参加しなくなっています。若い世代の多くの人々は意味と誠実な関係を求めています。しかし、パットナムによれば、彼等は頭痛、不眠症、消化不良などの問題を抱え、幸福感も感じられなくなってきています。若ければ若いほどより健康で幸せであろうと私たちは考えがちですが、実際はそうではないのです。