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「イングリッシュ・オンリー」運動は、英語があたかも守らなければならい神聖な地位を持っていたかのように考え、それが「汚染」されるのを恐れることです。日本でも最近の英語教育重視の結果、同じ様なことが表面化しているようです。国際英語教育の実用性については反対意見も出され、政治や経済の世界のエリートのみが英語が堪能ならよいという意見もあります。しかし、アメリカ人が外国語に対して抱く不安とまったく違うとはいえない、日本人の汚染への恐怖心が現れた例があります。高階秀爾は去年の10月に発行された『ジャパン・エコー』の中で、日本の中での「言語の独立性」の維持についての懸念をあらわしています。広範囲に外国語を教えることによって自国語が危険にさらされており、英語を重視することで「日本語の保護」が必要になると高階は言っています。これについては、たぶんアメリカ人も日本人もヨーロッパ人に学ぶべき点があるでしょう。彼等の場合は外国語が堪能なことで自国の言葉が危険にさらされることはなく、むしろ彼等の多国語の能力を高めることになっています。この懇談会報告の中で一番重視されたのは「個人の力」でした。山本は「21世紀は個人の時代になるだろう。グローバリゼーション、インターネット、ネットワーキングを通じて個人がより重要になるだろう」と言っています。このアメリカの新聞の記事がどれほど正確かはわかりませんが、この懇談会はアメリカ型の個人主義を日本の問題の解決策として推奨しているように思います。日本社会に問題があることは疑う余地がありません。またどんな近代社会においても基本的な、個人の尊厳を尊重する倫理的重要性があることも確かです。しかし、アメリカ型の個人主義が日本の問題の有益な解決策となるかどうかは疑問です。なぜなら特にこの個人主義がアメリカ社会に深刻な問題を引き起こしているように思うからです。

1985年に私は4人の人と共著で『心の習慣:アメリカ個人主義のゆくえ』(日本語訳あり)を出版しました。

 

 

 

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