櫻田淳 まず、台湾の現状が保全されることが日本にとって、どのような「価値」としての意味を持つかということは、この際、きちんと考えておく必要があります。台湾というのは、今では、「自由・民主」の価値を体現する国になりましたから、その台湾の現状の保全に関心を持つことは、日本にとっては、自らの「自由・民主」の価値に関心を持つことです。独立した政治主体としての台湾の現状が変更されそうになった折に、日本として適切に対応できるかは、日本が「自由・民主」の価値を本当に大事なものとして考えるかを問いかけている。そういう意味があることは、きちんと理解されるべきではないでしょうか。
次に、台湾の問題を「中国と台湾」というコンテクストに押し込めないで、もっと広いコンテクストの中に位置づけていく必要があろうかと思います。例えば、私は以前書いた「新『南洋』戦略論」(『諸君!』二〇〇〇年三月号)という論文の中で、いわゆる「ミクロネシア」の国々、つまりパラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島といった国々と提携していくことを提案しました。この点、さる四月、「太平洋・島サミット」というのが開かれまして、そこでは、日本と太平洋に散在する島嶼諸国との提携の加速が打ちだされたわけです。台湾も太平洋島嶼諸国の一つにほかならないわけですから、太平洋島嶼諸国との提携という大きな流れの中に台湾を巻き込み、そのことを通じて、中国に対する交渉力と申しますか、バーゲニング.パワーというものを増大させていくという構えが、大事になるかと思います。