私がさっき申したような南の国のアスピレーションにこたえるという点からいえば、今まで以上に重視すべきなのは人を通ずる協力だと思います。もちろん、道路とか港湾とかインフラの整備も南の国の開発に大いに貢献するんですけれども、やはり、日本が南の国の開発・発展に協力する際に、日本の経験に基づいた人を通ずる技術協力の面を今まで以上に重視すべきではないかという感じを強く持っています。
山田寛(議長) ありがとうございました。それから…。
太田博 ちょっと補足させていただいてよろしいですか。先ほどちょっと申しましたように、私、経済危機が発生したときにタイにいたんですけれども、日本としては珍しく、非常に素早く、タイに対する支援体制をつくり上げて、IMFのスタンド・バイ・クレジットの供与をはじめとして、いろいろな手を打ちました。その際、私も、上は総理から下は市井の人間に至るまでいろんな人から日本が頼りになる国だという感想も聞きました。ふだんはODAなどは黙っていても当然くれるものだと、英語でテイク・フォー・グランテッドと言いますけれども、そう思っていた傾向がタイについてもなきにしもあらずだったのですが、実際に経済危機に見舞われて、日本がいち早くいろいろな支援の手を差し延べたということに対して、タイは官民挙げて多としておりまして、例えば日本からVIPが来ますと、私もお供をして首相表敬というのがありましたけれども、一時期、タイのチュアン首相は、日本から閣僚が来ようと、財界の代表が来ようと、「この機会をかりて、日本のタイに対する経済危機に際しての支援に対して、タイの国民を代表してお礼を申し上げます」ということを必ず言っていました。アジアの経済危機を通じて日本が非常に頼りにされているなということを改めて実感をいたしまして、そういうような期待にこたえるという観点からも、南に対する支援を強化すべきではないかというふうに感じています。
山田寛(議長) 秋山さん。
秋山昌廣 山田さんが、最近の世論調査だとODA削減という方向が出て、日本が内向きになっているということを指摘された点について、確かにそういう要素があると思うんですけれども、その背景に、ODAのあり方、日本の経済協力のあり方あるいは経済協力をしている国の状況、軍拡をやっているとか、あるいは日本ができない衛星を打ち上げているとか、そういったような問題が背景に1つあると思うんですね。ですから、ODAが減っていることに対する国民の支持があることを単純に内向きとはとれないんじゃないかというふうに僕は思うんです。