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非常に大きな問題が今度、中国になるわけですが、つまり、在韓米軍の撤退はないと思いますけれども、縮小という問題が議論されるようになると、アジア・太平洋地域に非常に大きな影響をもたらすだろうという意味で、新しい問題が提起されているのではないかというふうに思います。

第2点は、朝鮮半島問題は終わったというのは、もちろんシンボリックに言っているんですが、より重要な、あるいは同じぐらい重要な問題として、私は海峡問題、中国と台湾の問題があると思うんですね。仮に北京といいますか、大陸の政権が極めて安定している、強い、あるいはレジティマシーがしっかりしているということであれば問題はないと思うんですけれども、右上がりのかなり高度成長をしていない限り安定は続かない。もし成長が5%を切る、実質的にゼロに近づいていくということになると、非常に大きな問題が起こると。そのときに、この海峡問題はかなり危機的な段階に行くのではないかというふうに思います。そのときの米国の方針、ちょっと大胆な言い方をすれば、民主党政権より共和党政権のほうが見通しがはっきりしているので、戦略が立てやすいと思いますが、かつ、共和党政権のほうが危機は回避できるというふうに思っておりますけれども、じゃあ、日本はどうするのかと。朝鮮半島の危機と台湾海峡の危機と日本政府ないし日本国民の感覚というのはかなり違うと思うんですね。これをどう日本が対応するのかということは、僕は非常に大きな問題だと思っています。

鐘が鳴りましたので、4つ思っておりましたが、3つだけにしまして、もう一つ申し上げたいのは、太田さんのほうからご説明のあった地域秩序への貢献という点について、特に日本のこれからの役割というのは大きいと思うんですね。既にASEANプラス3といったような話が出ておりますけれども、私は今、日本の政府あるいは日本の中での議論で非常に欠けているのが、リージョナルなレベルでの海洋問題についての協力、議論、これが例えば日本政府の政策の中でほとんど欠落されていると。外務省でも海洋法のときはかなりエネルギーを使ってやっておりましたけれども、現在、海洋問題についてそんなにエネルギーが使われていない。国会でもほとんど議論されていない。こういうことで、海洋国家日本の構想というのはとても立てられないと言いたい。つまり、海洋問題について重要なアジェンダとしてリージョナルな協力あるいは議論というものを日本がリーダーシップをとっていくべきではないかと。そのときに、中国は、必ずしもこれは敵対国ではないと思うんですね。中国は必ず航行自由の利益を受ける国になると思いますので、資源問題はありますけど、大陸国家中国が排除される国ではないというふうに思っております。

 

 

 

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