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この東アジアの地域協力体制の1つのねらいは、そういった形で中国を取り込む、エンゲージするということであります。もちろん、中国を取り込むというのはそんなに容易なことではないんですけれども、他方、中国を排除した形の東アジアの協力体制というのは考えられません。他方、中国にとっても、近隣アジアが安定、繁栄して、中国がこれらの国々と友好関係を維持する、相互依存関係を深めるということは、全体としては中国にとっても有益なことであるということを中国は認識すべきと考えます。

もう一つ、東アジア協力構想のかなめはASEANであります。最近ASEANはインドネシア情勢とかアジア経済危機等で色あせた感じがありますけれども、依然として南の世界のホープであることには変わりなく、今後とも世界経済の牽引者の役割を果たすことが期待されています。同時に、ASEANは日本にとって戦略的にも非常に重要な地域であります。先ほどシーレーンの話がありましたけれども、ASEAN地域にマラッカとロンボクの両海峡があるわけで、戦略的にも日本にとって極めて重要な地域で、このASEANとの協力関係を強固なものにするということが、東アジアの地域協力体制のもう一つの重要なねらいであります。

最後に、海洋国家という視点から、私の申したことをもう一度見直してみたいと思います。先ほど岡崎大使は、依然として海は引き続き重要だということがありましたけれども、他方、今までの議論の過程で、海洋国家という場合に、必ずしも物理的な海洋ということにとらわれることなく、普遍的な価値を掲げて世界のために貢献をすることが日本の国益、つまり日本の平和と繁栄につながるという、いわば開かれた国益を追求する、開かれたメンタリティーを意味するというふうに解釈できるとすれば、世界秩序レベルでの南北問題の解決、超近代文明の形成への寄与、貢献というのは、まさにそういうことであります。それから、地域レベルでは、昨年、五百旗頭真先生が、東アジアは、21世紀に、伝統的な中華帝国という図式を超える歴史の新しい局面を模索することとなる。その際、東アジアの中小国の存在をみずからの国益と考え、東アジア全体が某一国の排他的支配下に入ることを嫌って、開かれた多元的国際システムを築こうとする海洋国家日本の存在は、地域の多く国、多くの人々にとってよき知らせなのであるという主旨のことを言われました。

 

 

 

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