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第2の日本のアイデンティティとして私が申したいのは、「非欧米で最初にかつ自力で近代化した国」であるということであります。これは3つのことを意味すると思います。1つは、日本が欧米の国と同じく近代化した国であるということで、これは説明の要はないと思います。第2は、日本は近代化したけれども、欧米の国とは違うということであります。今までの議論でも、日本が近代化の過程で日本人のよさを失ってしまった、和魂を失ってしまったというような意見がありましたけれども、外国人が日本を見る目というのは非常に違います。私は、サウジアラビアとかタイに勤務いたしましたけれども、それ等の国の人々は、日本は近代化したけれども、欧米と同じ国になったとは見ていない。いい面も悪い面もあるでしょうけれども、日本のようにアイデンティティを失わないままに近代化をしたいというコメントをしております。それから、「非欧米で最初にかつ自力で近代化した国」の第3の意味は、日本は近代化をしようと努力している多くの非欧米の国々、南の国々の先輩、先達であるということであります。日本は、近代化が欧米の国の専売特許でないということを証明したわけで、日本はそういう立場から、近代化をしたいと努力をしている途上国の国々に貢献するのに最も適した立場にあるのではないかと思います。

そこで、このような日本のアイデンティティを踏まえて、日本が海洋国家として何をなすべきかということを、世界秩序と地域秩序の両方から見てみたいと思います。まず、世界秩序レベルで以上のような日本のアイデンティティを踏まえてなすべきことは、南北問題解決への寄与であります。今さら南北問題かという向きがあるかもしれませんけれども、実は、21世紀を迎えるに当たって、南北問題をめぐる状況が非常に大きく変化しているということが言えると思います。

第1は冷戦の終結でありまして、この冷戦中、西側のすべてのODAが戦略援助であったわけではなく、特に日本のODAはそういう色彩が薄かったんですが、事実として、冷戦終了後、世界の年間のODAの額が500億ドル台から2割減少しています。冷戦の終結だけが、ODAが最近世界的に減っている理由ではないにしても、大きな原因の1つであることは間違いないと思います。

それからもう一つ、最近の南北問題をめぐる状況の大きな変化は、グローバリゼーションでありまして、南北問題という点から見ると、グローバリゼーションはむしろ南北間の格差の拡大に拍車をかけていると思います。

 

 

 

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