ソ連が海洋を支配したらどうするんだと。そっちについたほうがいいのかと、そういう議論が出てくるわけですね。それで、もう30年ぐらい前から私がこうではないかなと言っておりますのがアングロサクソン論でありまして、これは要するに、海洋国というよりも、世界の覇権を持った国が海洋国だったということですね。それも17世紀ぐらいから後の話なんですね。大航海時代から後の話なんです。その前は中華大帝国、その前はモンゴル大帝国があって、中華帝国があって、トルコの大帝国があって、ムガール大帝国があって、それが大航海時代以来、そういう国のほうがどんどん強くなって崩れてしまうんですね。ですから、17世紀から後は、これはもう海洋国が常に覇権国であるということは間違いないと思います。
この覇権国と一緒にやっていった国は大概得していると。これに逆らった国はどうも失敗している。過去数百年間をとってみれば、これは常にアングロアメリカンだったということなんですね。1588年に無敵艦隊をつぶして、それから1650年ごろから例の英蘭戦争でオランダ帝国をつぶすと。それから、フランスと100年抗争しまして、カナダ、インド、エジプトをとる。それから、ドイツが2遍挑戦するけど、それをつぶすと。日本帝国もつぶしてしまう。ソ連が頑張りましたけれども、これは戦争しないで、冷戦でもってソ連帝国を解体させてしまった。その間、一度負けてから、アングロアメリカンについていた国は、例えばフランスとかオランダみたいにちゃんとうまくやっている。ドイツみたいに2回抵抗したやつはだめだと、そういうことなんですね。
16世紀以来の世界の覇権国というのは全部海洋国です。7つの海を支配した。それは当然だと思います。自分の領域の中の限られた資源だけでやっている国と、世界中の資源、どこでもいいから手を出して持ってこられる、そういう国とで、やっぱり経済のスケールがけたが違いますから、それが現在の世界であって、という意味で、日本は、海洋国家というよりも、世界の覇権、7つの海を支配している国と同盟を結んでいると、それが日本にとって一番安全であろうと、私はそう思います。それが一般論でございますけれども。
そこで、そこから先どう考えればいいかと。つまり、日米同盟の問題ですね。世界のシーレーンについても、これは加藤良三の論文にも書いてございます。これは単にシーレーンといっても、日本からペルシャ湾だけの問題じゃないんだと。これは世界的全部の海上交通の問題であって、それを持っているのはアメリカなんだ。だから、アメリカと協力すべきだと。これもまた正しいだろうと思います。ですから、もっと具体的に言って、シーレーン問題、ここからペルシャ湾まででもいいのでございますけれども、これをどうやって守るかという話になりますと、これはだれが守っているかというと、第七艦隊が守っているんですね。