そうした意味では、チャンスはつくっておられるように思うんです。野球で言えば、ヒットは打っている。ただ、そのフォローアップといいますか、さらに適時打(タイムリーヒット)というのを打つには、やはりせっかくアフリカに行き、ダボスに行き、それで失言をされたら一番困りますからということで、やはり書いたものだけをお読みになっているというのが印象で、もったいないなという感じがします。
20年前、僕、バンコクにおりまして、タイ外国特派員協会の役員をやっていたときに、当時の総理大臣、鈴木善幸さんが歴訪でお見えになって、鈴木ドクトリンのスピーチをバンコクでやりたいと。ぜひやってくれということで、外国特派員協会とタイのジャーナリスト協会と主催でやったわけなんですが、そのときに、日本大使館が「ここはスピーチだけ」と。それで、「記者会見、質疑は別のホテルで後でやってほしい」と。それはなぜかというと、当時、日本とタイの間にも、貿易不均衡という問題があって非常に厳しい質問が出そうだと。そうすると、総理大臣が立ち往生してしまうというのを一番日本大使館が恐れて、そこはスピーチだけということになったんですが、そのときにタイのジャーナリストからも外国のジャーナリストからも、なぜその場でどんどん答えられないんだという不満が出て、日本人役員としては悪戦苦闘したことを覚えているんです。それが20年たっても、何となく変わっていないな、タイムリーヒットが打てないのはもったいないなという感じがいたしました。
そういうことは別として、「世界秩序と地域秩序」について、まず基調報告のお二人の方から20分ずつ発言いただきたいと思います。
まず、この順番で岡崎久彦大使。これから、ここに議員も大使も、それから次官もいろいろおられるので、それを一々肩書を言っているのもちょっと混乱するものですから、恐縮ですけれども、皆、「さん」で言わせていただきます。
じゃあ、岡崎さん、お願いします。
2. 基調報告:岡崎久彦 岡崎研究所所長
岡崎久彦 立派な方々のお集まりで話させていただくことを光栄に存じます。
いただいた題が、「海洋国家日本の構想」、その中の「世界秩序と地域秩序」、これはこの会で一度、前にシンポジウムいたしまして、その結論がここに本になっているんですね。