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大部分の人は、むしろITで得られるメリットのほうをおっしゃいますけれども、そういうメリットはちゃんとセキュリティーができた上での話でありまして、そのセキュリティー確保ができないという国であれば、どうしようもないわけです。

たとえば、医者には守秘義務がございます。今まではカルテをちゃんと保管しておけばいいということになっていたんですが、今、インターネットなり、そういうところからどんどん病院に入ってくるとなったときに、今の医者に守秘義務を遂行する能力が殆どありません。じゃあ、そういうトレーニングをやっているか。本格的にやっていません。

だから、例えば、皆さんのカルテ。カルテへ記入する前も、大体、分析する機械が今では全部コンピューターですから、そこでハッキングされちゃうわけです。何もファイナルのところに行かなくたって、分析している機械のところへ侵入すればよいわけですね。しかも、内部不正ということも考えますと、これは何も記者会見で、だれかVIPの症状を発表するというずっと前にハッキングされる可能性がある。あるいは選挙のときも、選挙の票の集計をしているシステムがございますね。これなんかも当然、アタックの対象になる可能性は高いと思います。そこの防止レベルを相当高くする必要があるんじゃないか。まず、具体的にどうすればいいか、その辺のITは時間がございませんから、ここで終わりたいと思います。

伊藤憲一(議長) どうもありがとうございました。

それじゃあ、森本さんも「どうしても一言」と言うものですから。

森本哲郎 最後に、先ほどのご質問もありましたから。

私がきょう申し上げたのは、あくまで過去の歴史の展望です。古代の都市国家と現代との状況とは、もう全く違うわけですね。カール・シュミットもそういう観点が、そのまま現代に通じるというふうに言っているわけではない。

シュミットが一番強調しているのは「エレメント」という言葉なんですね。海洋的エレメントと陸地的なエレメントということです。エレメントというのは言ってみれば「資質」です。あるいはどこを志向しているかという、その価値観と言ってもいい。つまり海洋的な開かれた資質を身につけない限り、これからのグローバルな世界の秩序に向かって何の貢献もできないということです。

私がきょう申し上げたのは、あくまで世界史を海と陸から見た場合のほんのわずかな例でございまして、それは何もミノア文明が今に通じるということではありません。

 

 

 

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