例えば、アメリカ軍なんかも、そういうサイバーウォーのシミュレーションというか演習をやっていますね。有名なのはエリジブルレシーバー97、1997年にやった。その場合、これはたった36人ぐらいのハッカーを雇ってきまして、全米、あるいは全世界の米軍にアタックさせたわけですね。完全に破られたわけです。ですから、日本の場合も非常にうまくいっているITの話がありますけど、1つはセキュリティー能力が日本が弱いのが問題ですね。これは企業から国家から全部そうであります。ですから、大抵の場合コンピューターにハッカーが入っていきますから、皆さんの診療データも全部入っている病院まで含めまして(将来はゲノムも入ると思います)、それを守れる能力がないと、それは全く弱い立場じゃないかと思います。ともすれば、すぐファイヤーウォールだとか暗号の話になっちゃうんですね。それはもちろん必要であります。錠前みたいなものですから。ところが、実際に起こっているのを調べてみると、アメリカのデータなんかでも大多数が内部からの不正なんですね。じゃあ、内部のときどうやるんだというテクノロジーと、あるいは人事管理から人間に対する信頼とかが重要です。ITだと、その辺は全然、問題にならないような発想になっちゃうというのが、ちょっと思い込みみたいな危険があると思います。
それからもう一つは、さっき雇用の問題を畑先生がおっしゃいました点で、ちょっと。
テクノ関係人口でいいますと、例えば90年代の初めに、今から考えると日本が後悔すべきところがあったと思います。これはアメリカの場合は軍民転換で、非常にたくさんの優秀なテクノ人材が民間へ出てきたんですね。日本でいいますと、戦後は戦争中の軍にいた人材が出てきた。あるいは明治維新のときは、よく教育された士族とか、モラルの高い人材が出てきた。今、ロシアにしろ、どこにしろ、みんなどこにテクノの頭脳がいて、それがどう動いているかという意味の一種の計算が、日本の場合、90年代初めになされなかったんですね。アメリカの場合はほんとうにたくさん放出され、それがインターネットをやり、金融工学をやり、あるいはゲノムをやり、新しいところを死に物狂いになってやった。ここの差というのも、かなり深刻であります。じゃあ、日本の場合、そこをどう対処するか、そういう人材について、さっき移民の問題もありました。外との開放ということは、インターネットのようなものもありますし、移民受け入れなんかもそうなんですが、そのときもセキュリティーの問題というのは避けて通れないわけであります。例えば、IT戦略会議でも、私はセキュリティーについて2回発言しました。