この点は確かに「海洋国家日本」云々と言っている日本の、そして口を開けば「開かれた日本」云々と言っている日本の本質にかかわる問題なので、まさに「海洋国家日本の構想」の根幹にかかわる問題だと思うんですが、この点について、少し議論を深めたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
会場を見渡しますと、大変な論客がたくさん来ておられますので、しばらくの間お1人3分以内ということで、フロアーからもご発言ご希望の方がおられれば、ちょっと手を挙げていただきたいんですが。
それじゃあ、坂本さん、お願いいたします。坂本さんは中央大学の教授です。
坂本正弘 今の問題に限ってお話し申しますと、確かに19世紀までは海の時代だったと思うんです。海がやっぱり情報を運び、物を運び、そういう意味じゃ、当時のグローバリゼーションというのは船によって行われた。ただ、20世紀を見ますと、どうなんでしょうか。通信と航空の発達というのは、過去と違う流れをつくっているんではないか。つまり、20世紀の栄えた国、勃興している国というのはソ連。ソ連はつぶれましたけど、ソ連であり、中国であり、アメリカはもちろんそうですね。それからインドが最近非常に出てきた。それからヨーロッパも、要するにネーション・ステーツから、さらに大きな国になろうとしている多民族を擁した国が、20世紀、あるいは21世紀にかけて、非常に大きくなっていこうとしている。ですから、海洋国家だけが非常に開明的だという議論は、私は非常に最近抵抗を感じます。
その1つの理由は、やはりこういう航空や通信の技術の進展がそういう大国を有利にしているというのがある。ですから、そういう意味で言えば、伊藤先生が今おっしゃったような最後の人口の移民を増やすとか、あるいは自由貿易でシンガポールともっと強く手を結ぶとか、そういうこと。
遠藤さんがさっきグローバリゼーションをむしろ日本はいかに活用すべきかといいましたが、アメリカは非常にグローバリゼーションを活用していると思うんですね。アメリカの経常赤字は大体4,000億ドルぐらいですけれども、世界中から8,000億ドルの金を集めて、それを再投資している。