私自身、新たなる海でありますバーチャル世界の健全なる活用のため、日本のIT革命を日夜推進しているわけですが、その際最大のボトルネックが、実は「日本型雇用の硬直性」ということでございます。ITを利用すると確かに、あるところでは確かに生産性が上がる。しかし、生産性が上がるということは、これまでより効率が良くなるということで、つまり従来ほどの人手をかけなくても同様の仕事ができるようになるということですから、当然その部署では雇用のダブ付きが生じてしまう。ダブ付いた労働力を、人手が必要な職場にシフトできれば良いわけですが、そのためには雇用の流動化を促す、あるいは可能にするため、年金のポータビリティ化をはじめとして法改正や税制改正を行い、環境を整備しなくてはなりません。しかしながら、雇用の流動化を進めること自体に国民のコンセンサスが形成されているかと言えば、決してそうではなく、従ってこの種の問題はあまり大きく進捗しません。私個人としては、ITにより個々の生産性を高めて、そこでどうしても淘汰された労働力というのは、再教育の上、労働力が不足している職場に戻していく。そのように労働力のマッチングをはかれるようシステムを変えて、少子化にも耐えられる身軽な海洋国家を日本は目指すべきだと考えていますが、実際は、やはりたとえある一定期間であっても雇用を縮小させる、リストラされる可能性を増大させるシステムへの転換を図るとなると、国民に余程の覚悟が無いと実現は困難なわけでして、この点についてももしどなたかお考えがあれば、是非伺いたいと思います。
10. 質疑応答:会場ゲスト
伊藤憲一(議長) 海洋国家日本の体質としては、少数精鋭の高い教育水準と生産性を持った国に衣がえする、その絶好のチャンスだという長谷川説と、それから、やはり人口の一定規模は必要であるし、また過渡期における犠牲や混乱を最小限にする必要があるという観点からも、必ずしもそういう少数精鋭という政策には賛成できないという立場と、2つ今あらわれているわけでございます。
それで、後者の立場をとった場合においても、実際問題として、人口規模を維持するためにはどうするかとなれば、1つは、なるべくこれからの若い人たちに子供をたくさん産んでもらうという自然人口維持論と、もう一つは、人口減少は生物学的必然性であって、フランスを見ても、ヨーロッパ諸国を見ても、長期的に人口低落はもう避けようがないんで、これは民族が成熟してきて、ある段階に達すれば避けられない人口学的な法則なんだという観点から、移民を受け入れるべし、日本に来て、帰化して、働きたいという人たちが、特にアジアにおいて多いわけですから、そういう人たちを受け入れるべしという移民受容論がもう一つあると思うんです。