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日本の人口は多過ぎます。シンガポールが国境を越えて、いろいろ考えたり何かできるのは、どうも身軽で、そういうことができるんではないかとも考えます。日本は内憂外患が多い。内憂が多くて、外のことをあまり考えている暇ないんじゃないでしょうか。7,000万ぐらいの規模の人口で、政府が社会政策、或いは産業政策を立案実施していったらいいんじゃないかとの趣旨の一文を書いて、ある出版物に寄稿したんです。2年前ですけれども。それを何人かの方にお見せして意見を求めたんですけど、反応は全くよくない。政治家の方にもお見せしました。ある方は、「長谷川さん、こんなことをやっていたら日本は小国になっちゃうよ」との反応でした。私がその方に申し上げたのは、ドイツ、フランス、英国をごらんください。大体人口は6,000万、5,000万ですが、政治的大国ですと。高い科学力、技術力、或いは充実した文化、そして安定した経済の発展、こういったところを日本は目指すべきじゃないかということを申し上げたんです。海洋国家論と直接関係はございませんが、日本の将来の国家像について考えていることを、ひとこと追加いたします。

伊藤憲一(議長) どうもありがとうございます。

なかなか示唆に富むご意見をいただいたと思うんです。大陸国家というのは、とにかく人口がなきゃいけないんで、人口の大小によって国家の規模を競う。そこから何十万、何百万の軍隊を組織して、隣の国に押しかけるわけです。人命はどちらかというと消耗品として軽んぜられる。ロシアとか、中国とか、オスマン・トルコとかのやり方を見ているとそうですね。ベネチアなんかが100人か200人で守っている砦に何十万人で押しかけて攻め落としているんですね。これに対して、ベネチアなんていうのは、もちろん人口数十万ですが、あのポルトガルが全世界に海上覇権を唱えていたときのポルトガルの人口も、たしか、私、今手元に数字ございませんが、記憶では100万いっていないんですね。イギリスがインドを植民地にしたときも、インドというのは、当時でも何億という人口規模でしたが、インドに行っていたイギリス人の数というのは全部で1万人にも達していなかったと聞いております。これはすべて海洋国家においては一人一人の能力が120%活用され、量ではない質の人材の開発、使い方がなされていたからだろうと思うわけです。まさに長谷川さんが2年前に提起された論点というのは、日本の常識論では、人口が減れば、これは大変なことで、何とかして人口を増やさなきゃいけないということだったと思うんですが、しかし、果たしてそうなのかという観点からの発想というのは、海洋国家日本の発想じゃないかと思うんですが、この点について、ほかの方、いかがでございますか。

 

 

 

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