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8. コメント:平野拓也 海洋科学技術センター理事長

 

平野拓也 平野でございます。今、ご紹介いただきましたように、私は先ほど森本先生がおっしゃった海洋力をつけるために、科学技術の面から、日本が海岸民族を脱して海洋民族たらんとするにはどうしたらいいかということを模索している立場から少し申し上げたいと思います。

先ほど、長谷川先生が、海洋国家というのは、普遍的な価値を掲げて、それに貢献する国家であるという太田先生の見解をご紹介になられました。その普遍的な価値というのは、知的なものとか、あるいは経済的なものとか、いろいろあるわけですが、私はその知的なほうでどういう貢献ができるかということについて若干申し上げます。

前回だったかと思いますが、海洋というのは、もう古いよ。空もあるし情報もあるしというような言葉も出たようですけれども、研究といいますか、科学の面から見ますと、海というのは、まさにまだフロンティアであります。20世紀の後半、1960年代から今日まで、おそらく人類史上でも大発見といえるものが二つ海から出ているわけです。一つはプレートテクトーニクスというものが実証されたということであり、それからもう一つは、化学合成生物という海底の地中から湧く物質をエネルギーにしていて、太陽のエネルギーに依存しない生物の存在です。これは貝とかカニとかいろいろいるわけですが、そういうものが発見されたというようなことがあります。このように、海というのは、まだ非常にフロンティアであって、考えようによっては、月や火星なんかの研究のほうが進んでいる面がたくさんあるわけです。

今、日本の海や地球の研究というものはどういう方向に進んでいるかというと、グローバリゼーションとでもいいますか、活動を世界に展開しているというのが実情でございます。私どもの観測活動というのも、北極から太平洋、インド洋、大西洋、そういうところまで活動しております。これはどういうことかといいますと、温暖化を含めましてグローバルチェンジと言っております地球環境の変動というものが、今、人類的な課題になっているわけですね。そういうものを正確に科学的に予測していこうというプロジェクトを日本が主導で推進しているわけです。これは観測、研究、シミュレーション、そういうものを一体として進めていこうということで、いわゆるハードの面においては、我が国のレベルは非常に高いということです。

 

 

 

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