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1つの具体例を挙げてみますと、日本と西欧の間で、物の移動について、日欧・ランドブリッジという構想があります。これは日本から中国の天津まで船ですけれども、それから中国の西の国境を陸路、カザフスタン、それからロシア、それからヨーロッパと、陸路で物を輸送するという構想があります。過去10年ぐらい、運送業者を含めて実験したり研究しているんですが、なかなかこれは実現しない。国家主権の問題があり、あるいはCIQ、税関、出入国、それから検疫の問題があって実現していません。他方、海路を通ずる日本・欧州間の移送は全く簡単で、これが現在、空路を別にすれば、日本とヨーロッパの一番重要な輸送のルートになっています。また、今日のような情報化の進んだ時代では、この利点というのは相対的でありますけれども、海洋国家の場合、情報の発信あるいは入手が容易であると思います。もちろん、これが可能であるためには、関係した国家が自由で民主的で、かつオープンな社会であるということが前提だと思います。さらに第3の利点は、国境にとらわれない自由な発想が可能であるということかと思います。

海洋国家につきましては、太田専務理事が第4回の自由討論会合で極めて適切な定義づけをしておられますので、それをちょっとここに引用させていただきます。

引用。

海洋国家というのは、必ずしも海洋にとらわれることなく…。

伊藤憲一(議長) 何ページ。あ、そっちですか。

長谷川和年 よろしいですか。

伊藤憲一(議長) よろしいです。

長谷川和年 とらわれることなく、普遍的な価値を掲げて、世界のために貢献することが日本の国益。つまり、日本の平和と繁栄につながるという、開かれた国益を追求する開かれたメンタリティーを意味すると解釈すべきであると。

引用終わりです。

これは太田さんの豊かな外交上の経験に基づくご見識と思いますし、私はこれに全く同感です。

では、海洋国家日本の国益追求はどうあるべきかということですが、20世紀の主要な国際問題は、例えば原材料の供給先の獲得とか、あるいは製品の輸出市場の拡大、または領土紛争、宗教上の紛争、そして途上国問題と、こういった問題でございました。これからの21世紀以降、世界はどういう問題に当面するか。

 

 

 

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