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日本は「世界主義の採用が同時におのれの民族主義の方向を満足させ得る国家」に脱皮すべきなのです。そういう戦略的な視点が不可欠ではないか。

そのことはITについても言える。IT――情報技術というのは、それ自体が価値でもなければ目的でもなくて、ツールにすぎない。道具なんですね。今、「IT革命だ、IT革命だ」と大騒ぎしていますが、これはノコギリやカンナを前に騒いでいるようなもので、肝腎なのはこの道具を使って何を作るか、すなわち二十一世紀の日本の国益を確保するために、あるいは日本の伝統や文化、言語、価値観といったものを保守し、活性化させるために、ITをいかに活用するかという視点が求められているのです。IT関連に予算を振り向けるのは結構ですが、そういう視点からのコストのかけ方を追求すべきだろうと思います。

伊藤憲一(議長) どうもありがとうございました。

日本は古来、中国文明、そして欧米文明と、よりすぐれたノウハウ、技術を持つ外来文明と直面して、それを自己の目的のために取捨選択して吸収し、活用して、自分自身をさらに一層高めてきたという歴史がございますので、今日言われているグローバリズムについても、結局同じことを遠藤さんはご指摘になられたんじゃないかと思ってお話を伺っておりました。

それでは、続きまして伊藤忠商事顧問の長谷川さんにお願いいたしたいと思います。

 

6. コメント:長谷川和年 伊藤忠商事常勤顧問

 

長谷川和年 長谷川でございます。

今までに自由討論会で十分議論されてきたところですが、私なりに、いわゆる海洋国家が有する利点というか長所を例示的に挙げてみたいと思います。なお、私は過去約40年、外務省に奉職したこともありまして、私が申し上げることは、私の実務的経験に基づいた点が多いことをお断りします。

海洋国家の大きな利点というのは、やっぱり物理的な国境がないと、そういった物理的な、地理的な要件かと思います。すなわち、まず第1に、海洋国家の場合、国境がないので、人、物、財貨の移動が非常に容易です。

 

 

 

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