今の日本は、ご存じのとおり海洋離れが進んでおりまして、とても海洋国家であるとは言えないと思います。島国から海洋国家に国家の基本軸を転換するためには、まず、冒頭言いましたように、海洋と積極的にかかわることが原点になると思います。海洋とかかわるためには、石井先生の報告に関連しますけれども、昔も今も技術力、情報力と、それに国民の国際的な感覚とプラス志向が必要になると思います。逆に言えば、海洋国家というのは技術立国、教育国家とならざるを得ないところがあるわけです。
今、日本が海洋国家として持つべき力というのは、以前、日本が海洋国家ではないかなと思われたときに持っていた海運や造船力、あるいは船員能力といったものではなくて、石井先生も言われましたバーチャルな面、情報技術力とか、あるいは国際的なリーダーシップであって、そのような力を持って、ボーダーレス化し、総合的に管理される海洋世界の中に入ってリーダーシップを発揮していくことが必要であると思います。そのような中で、日本のアイデンティティーと、国際的な地位を見出していくことができると考えています。
伊藤憲一(議長) どうもありがとうございました。
それでは、続きまして拓殖大学日本文化研究所の遠藤さん、お願いいたします。
5. コメント:遠藤浩一 拓殖大学日本文化研究所客員教授
遠藤浩一 ありがとうございます。
フェニキア、ギリシア、ベネチア、スペイン、ポルトガル、オランダといった繁栄を謳歌した海洋国家か、しかし、やがて衰退、没落、あるいは場合によっては滅亡してしまった。その理由は何かということを考えてしまうのです。
もちろん表面的な経緯は、新たなライバルが台頭し、そのライバルに制海権を奪われ、敗れ去ってしまったということなんですが、その背景にはナショナリズムの衰退という問題があったのではないかと思うのです。これらの海洋国家は繁栄と平和の果実をむさぼっている間に、ナショナリズムというものが衰退していって、それがやがて国力の衰退、国家の没落につながったのではないか。