どこまで成功することができたのか、できるのか、それはなお問われている問いでございます。
それでは、ただいまから5人のコメンテーターの方々に5分ずつコメントをちょうだいいたしまして、その後、コーヒーブレイクということで進めさせていただきたいと思います。
それでは、プログラムの順序に沿いまして、まず、秋元海洋学研究所代表の秋元さんからコメントをいただきたいと思います。秋元さん、よろしくお願いします。
4. コメント:秋元一峰 秋元海洋研究所代表
秋元一峰 高いところから僣越ですが、ご指名により、コメントをさせていただきます。
海洋国家とは何かといった議論では、今、伊藤先生からもありましたように、マッキンダーの『歴史の地理学的回転軸』であるとか、あるいはマハンの『歴史に及ぼしたシーパワーの影響』といった、地政学、あるいは国家繁栄論などがよく取り上げられます。ここで議論する海洋国家像は、そのようなものではないということは十分理解しておりますが、しかし、それでもここで求めているような、アイデンティティーを持って異文化と接して交易し、新しい知識を吸収し、発展する、そのような海洋国家的な道を目指すには、まず国家が海洋と密接に交わることが必要であって、それがすべての原点ではないかと思っております。
森本先生が、民族あるいは国家がどのように海洋とかかわってきたのかを、人類と海洋のかかわりの歴史の中で振り返って話されました。フェニキアの海洋活動だとか、あるいはローマ帝国による地中海の支配や、きょうは時間の関係でお話が出ませんでしたけれども、この本にも出て来ます、アジアの海に広がっていた交易路と、そこにおける明の鄭和艦隊の活動、それから、ポルトガルとスペインによる大航海時代と、それに続くイギリスによる7つの海の支配というものがありました。
いろいろな民族や国家が海洋とかかわってきましたが、舞台となる海洋は決して同じ構造ではなく、そのときどきの世界というものがあったと考えています。私はそれを「海洋世界のパラダイムシフト」と読んでいます。