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要するに、マルチタスクで揺らぎがあること。それを吸収できるようなシステムのコントロール、それができるITが出てきたこと。その出方が、予想を上回るような速さで出てきた。この異常な普及のスピードから、かなり人間の本性に近い能力じゃないかと思います。マルチタスクみたいなことをやることは、僕自身もちょっと前までは、そんなのは異常で大変だなと思っていました。そんな生活は忙しいなと思っていたんですが、やり出して、今みたいにどんどんメールが二、三回、話している20分の間に来ていて、それを苦もなく処理しているということをやっていますと、全く当たり前になってきました。もともとそういうマルチタスクの能力を人類は持っている。それを今まではシングルタスクの工業化に合わせるために、ある意味の適応を強引にやっちゃった。だから、高齢者の人ほどその適応があまりにも過剰になされていますから、小さい子供たちは、全くそこがまだナイーブですから、こういうiモードが来ますと、大体子供、小学生に渡しますと1時間でできるようになります。殆ど教えなくて。小学校の3、4年では、説明書が大体読めません。我々はすぐ説明書を読んじゃうんですが、そうじゃなくて、そういう子供たちは、30人ぐらい集めておきますと、メールが打てるようにあっと言う間になるんです。

去年、僕も非常に不思議だと思いまして、2回、そういう実験をやってみました。3泊4日のキャンプをやりまして、慶應の学生を中心に、そこへ数十人学生が行きましてやってみましたら、もうほんとうに瞬く間に子供たちは、ちょうど言語を覚えるのと同じ感じでできるようになります。私たち年配者は、工業化社会に過剰適応したために、こういうITへの再適応に非常に苦しんでいる世代じゃないかと思います。どうも、ご清聴ありがとうございました。

伊藤憲一(議長) 伝統的な海洋国家論というと、アルフレッド・マハンの唱えたような、シーパワーの活用による一国の繁栄の追求というようなことで、伝統的にそういうことで論じてきたと思うんです。したがいまして、この「海洋国家セミナー」ということでご出席いただいた皆様も、そういう既成の観念の影響を私も含めて受けていると思うんですが、今回のセッションで、歴史と未来ということで、未来も含めて考えてみようというときに、実は日本が「海洋国家」であるんならば、であるがゆえにこうしなければならない、こういう方向に進むべきだという示唆というのは、もう19世紀的な、マハン的な方向感覚だけでは包摂できない、非常に広がりのある、「ヴァーチャルな揺らぎ」を含めて、「情報とか通信の海」というものを、むしろ構想しなければならない、そういう時代に、つまり21世紀に入ってきたわけですが、そういう中で「海洋国家日本の構想」を考えてみたいというのが、実は私どもの野望というか野心でございます。

 

 

 

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