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これがなかったら、僕にとっては大変不安というか、困っちゃうわけであります。学生も多分、先生の講義を聞くときも、電波が来ている、iモードが使えるところで聞いていると、おとなしくしている。それがないと、私語をするんじゃないかと思いますけど。そういうことは、この本の中では触れていません。ちょっと前に起こっちゃっていることでございまして、事実が先行している。

さっき予測が非常にしにくいということを申し上げました。そのことを残り時間で申し上げたいと思います。

さっき複雑系と申し上げましたが、予測が非常にしにくい例の1つとして、原因と結果の関係です。昔は原因がほんのちょっと、殆んど無限小変わりますと結果のほうも連続的に少し変わるというふうに考えていました。だから予測ができるわけですね。要するに微分方程式みたいなもので、ちょっと変わると比例してちょっと変わるから、それをずっと積分していけばわかる。これが予測できる近代工業化の最も基本的な論理でございます。だから、微分・積分のニュートン力学です。ところが複雑系になりますと、ほんのちょっと変わったら、結果が不連続的に全く違うという関係が、初め気象の計算でわかるわけです。ですから、無限小ということは同じ原因とも見れますから、ほとんど同じだと見た原因で、また結果が質的に全然違う結果が出てくる。例えば気象の場合ですと、よく言われているのは、チョウチョウがぱたぱたと北京で羽ばたいた影響で、ニューヨークがあらしになった。ぱたぱたやらなくて、じっとしていたら、ニューヨークは晴れになるというような感じでございます。この「バタフライ効果」という現象は、逆に言うと、非常に予測が難しいということだと思います。これが情報ネットワークなんかを中心にした複雑な系の特色でございます。その影響で、要するに世の中が揺らいじゃうわけですね。かつてはきちっと予定できますから揺らがない。揺るぎなきという形容はよかったんですけど、今はもう揺らいでしようがない。特に揺らがないようにしちゃいますと、それだけ能率を落とすというか、機動性・即応性が悪い設計にしなくちゃいけない。揺らぐようにすると、むしろ効率がよくなるということであります。

例えば、皆さんがiモードでなくても、携帯電話を持っておられるとします。そうすると、時間の変更がすぐできます。どこかで会うというときに、1時間おくれます。だから、もう1回リアレンジしましょうということはしょっちゅうやっているわけでございます。

 

 

 

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