現にこういうマルチタスクをこのiモードなんかでやり出しますと、寝る時間が1時間早くなったなんていうデータさえある。ですから、時間とバーチャルの海と非常に関係がある、リアルの海はもちろん物質の輸送とかエネルギーとも関係がありますが、一方で時間とか輸送とかと非常に通信なんて関係があると考えますと、今、確実に個人の動き、交通(空間的な動き)とこういう情報が一体化してきた。時間が多重に使えるようになってきた。
これが空間に実は影響を始めております。ちょっと、この本にはまだ書いてなかったことがあります。使ってみるとすぐわかるんですけど、最近、iモードの表示を見ながら歩いている人をたくさん見ますね。それから、きょうは僕ぐらいしかここに置いていませんけど、大学に行かれますと、みんな時計がわりで机に置いています。だから、腕時計がもう売れなくなっちゃったんですが、ともかくそういう学生がいっぱい教室で聞いているわけです。この1年で大学生の私語がかなり減ったんですね。皆さん、笑っておられるからわかると思いますが、みんな携帯電話でインターネットをやっているわけです。私語の内容は増えているんじゃないかと思うんですけど、少なくともしゃべらなくなったわけです。リアルなワールドでは、一見、お行儀がよくなりました。僕だけかと思っていたら、ほかの大学の先生に聞いてみたら、やっぱりうちもそうですなんて言っていました。ですから、そういうことが新しい海で、さっき海洋民族なんていうことを言いましたけど、実際、リアルな陸のほうに陸蒸気という形で上がってきております。
例えば、iモードの表示を見ながらやっていると危ないんで、今、一番安全に見ながらやれる方法というのがございまして、それは目の不自由な方のためにある点字タイルに沿っていくと非常に安全だと言われていまして、現に沿って歩いています。それから階段は危ないですから、スロープを使うわけです。つまり、一時的に車いす的身障者になったり視覚障害になったような形で、これが使われるんですが、そのとき考えてみると、空間が二重に使われているわけです。今までは空間というのはフットワークのために廊下があったり階段があるんですけれども、iモードをやるためにあるという考え方もできます。例えば、そういうふうな、これをやりやすいように変えてくれれば、どこででもできる。逆にそうじゃなかったらできないわけです、iモードを持っていてもですね。
この部屋は立派だと思います。地下で、大体そういうところに行くと通信ができなくなっちゃうのが普通なんですが、この部屋は非常によく電波が入ってきます。ですから、その意味で、電波という新しいタイプのバーチャルの海に接しているかどうかが、もう決定的でございます。