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例えば南仏のマルセーユにしても、スペインの西にあるカディスにしても、あるいはモロッコのラバトにしても、みなフェニキア人、カルタゴ人が築いた経済基地だったのです。

そんなぐあいに貿易を独占すれば、当然ライバルが出てくる。その競争相手がギリシア人でした。ギリシアとフェニキア、カルタゴのライバル関係が、やがてローマを呼びだすことになるわけです。

ここで、ちょっと、地球上を見渡しますと、民族的にいって、陸民族と海洋民族と2つに分けることができるんじゃないかという気がいたします。日本流に言うならば、『海彦、山彦』という話がありますね。海彦になるか、山彦になるか、でその民族、国家というものの性格がかなり違ってくるわけです。

では、どういう民族が海彦、すなわち海洋民族になり、どういう民族が山彦、すなわち陸の民族なるのか。

まずローマですが、ローマは本来は陸の民族でした。強力な歩兵軍団を持ち、陸の内部に目を向けていた。そして、海にあまり関心を払わない民族だったのです。ローマは最強の陸軍を誇り、他民族を征服していくという、そういう陸的志向につき動かされていたのです。

ところが、ギリシアにかわってフェニキア、カルタゴとの争いの主役となる。ここで有名な3次にわたるポエニ戦争が起きるわけです。最終的にはローマが大勝利をし、カルタゴは500年で滅亡していってしまうわけでありますが、1次、2次のポエニ戦争の経過を見ますと、ローマはカルタゴの海軍力によって大いに苦しめられているんですね。しまいにはローマ陥落寸前にまで追いつめられる。では、なぜ立ち直れたのかというと、ローマは、だ捕したカルタゴの軍船を徹底的に研究し、カルタゴの船団に匹敵するだけの海軍力を持つことに成功したからです。そして、ついに第3次の戦いでカルタゴを封鎖し、ついにカルタゴを殲滅してしまうわけです。

それからいろいろなドラマがありますけれども、ローマが大帝国になっていくのは、これもまたまた海の戦いでありました。有名なアクティウムの戦いです。シーザーなきあと、オクタビアーヌスはイタリア半島、アントニウスはオリエント地方を統治することで協力していたのですが、やがて皇帝の座をねらって、両者は対立し、覇を争うことになる。アントニウスはクレオパトラ軍と組んでオクタビアヌスに挑む。両者はアクティウムの沖で一大海戦を展開することになり、この海戦でオクタビアヌスが決定的に勝利をおさめるわけですね。

 

 

 

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