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海を制覇したものが海洋国家になるのです。日本も、日露海戦に勝って、海洋国家という意識が急速に生まれてきたんですね。とすれば、日本が新しく海洋国家を目指すとするならば、海軍力を強化しなければならない。と言うと暴論のようですが、それはなにも海軍力によって他国を侵略するということではなくて、あくまでも防衛を目的とした自衛力ですね。例えばシーレーンの問題もありましょうし、海底資源の問題もある。ですから、海軍――いまは海上自衛隊ですけれども――海をしっかり護る力、そして、海を存分に利用し得る能力、通商力、輸送力、ありとあらゆる面で海というものを舞台にしていく発想を持たねばならないでしょう。海を利用する技術力がない限り、とうてい海洋国家などとは言えないと思います。

この点から考えると、現在の日本は海洋国家とは、とても言えません。せいぜい海岸国家です。もし海洋国家をめざすならば――島国である日本は海洋国家たらざるを得ないと思いますが――この問題は避けて通れないと思います。これは憲法その他に関連する重要問題ですから、このような短い発言では誤解されるといけない。もっと時間をかけて、大いに検討していくべきでしょう。

伊藤憲一(進行司会者) ありがとうございました。秋山さんもちょっと触れられたことだと思います。重要な論点なのだろうと思います。

それでは、太田さん、最後に何か総括してください。

太田博(問題提起者) 総括というか、1つ、感想ですけれども、先に申しましたとおり近代化というのは多くの南の国にとってのアスピレーションである。よりよい生活がしたいというのが原点だと思いますが、ということは、近代文明の行き詰まりとか、超近代文明の話が出て、また軍事力から、富のゲームから知のゲームへと移行といったようなことが言われましたが、実はこれが当てはまる国は世界でごく一部なのです。OECDの加盟国で言うと30カ国で、世界のほとんどの国はまだそういう段階からはるかに遠い時点にある。

そういう国々がぜひ産業化、近代化をしたいと願っているわけで、日本も一方で超近代文明への貢献を考えつつも、まだまだそこにははるかに及ばない国々に対してもシンパシーを持って、そういう国々の近代化あるいは国づくりに貢献するというのが日本の基本姿勢であるべきではないかと考えます。

 

 

 

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