そういう問題があると思いますし、話が長くなりますからキーワードだけ言いますと、対外情報発信力を日本が海洋国家日本の構想なり、日本の文明・文化の説明をする場合に、これを強化するということをぜひ考えなければいけないと思います。
強力で有効な、自前の対外情報発信機能を持つということが、まさに私たちが議論してきました、これからの海洋国家としての資質の一つだと思います。折角のすぐれた構想も、日本がなぜそういうことをするのかも、日本の視点から発信して説明し説得できなければいけない。
長年、日本から外国に出ていく情報の量は、それも質の高い情報の量は、外国から日本に入ってくる量にくらべて1対30とか、はるかに少ない、日本の入超になっています。
例えば、既年のアジア通貨、経済危機の時に、日本はあれだけ迅速に多額の緊急資金援助を行って、あとから見れば、それらは大いに有効だったし、タイやインドネシアなど当事国からも感謝されたのに、欧米では正しく評価されなかった。200億ドル(実際には50億ドル実施)の緊急対韓援助を行った日本よりも、ソウルにサマーズ財務副長官(当時)を送り込んだ米国の方が、金を出さないでも、韓国を危機から救ったのだという話が定着しました。これには、米国のAP通信やワシントンポストの強力な報道が大きく働いているというのが多数の見方です。
この関連で、情報発信力の問題はメディアに限らない。日本の政治家、リーダーの、政策やビジョンを国内だけでなく世界に説明し説得できる能力が重要だと思います。アジア通貨危機の時に出された日本の「アジア通貨基金(AMF)」構想は、米国の反対で実現しなかった。しかし今年になってASEAN+3で、日中韓の首脳でAMF構想と同じものが合意され、実現されることになった。やはり日本の提案がアジアの通貨情勢安定に必要ということが理解されたということなのでしょうが、はじめからきちっと主張し説明し関係国を説得できたらもっとよかったと思うのです。
伊藤憲一(進行司会者) ありがとうございました。
それでは、森本さん、一言。
森本哲郎 一言だけ申し上げたいと思います。これは江畑さんのご専門の問題だと思いますが、歴史的に見ますと、当然ですが、海洋国家で海軍力を持たなかった国家などありません。