それから、ジェームソンさんの言われたことですが、要するにアジア通貨基金を提案してすぐやめてしまったということに対して、エズラ・ヴォーゲル教授も言っている。つまり、「日本はイニシアチブをとる、それが非常につらいこと、痛みのあること、苦しいことなのだけれども、それに耐えられるメンタリティーではまだないのだ。つまり、アメリカに反対されたらやめてしまうというのは、要するに、それを乗り越えてアメリカを説得していこうという気概がないのである」というようなことをエズラ・ヴォーゲル教授は盛んに言っていました。
だから、江畑さんが、アメリカと渡り合うというようなことを言われたのですけれども、渡り合えるのかなと、ずっと見ていて、非常に強く感じるのです。その上で、太田大使が言われた東アジアに開かれた多元的国際システムを築こうというのは、僕はもう大賛成だし、これは非常にそのとおりで、ぜひやらなきゃいけないと思うのですが、ただ、ロング・ウエー・ツー・ゴーだなと。ふんどしを締め直すというのは、精神的なものだから、僕はあまり好きな表現ではないのですが、ただ、これまで日本が、アジアの協力体制と東アジアの協力体制づくりにどれだけ積極的にやってきたかというと、太田大使も言われたEAECですけれども、これはアメリカが反対した。もちろんそうなのですが、日本も相当に足を引っ張り続けたわけです。特に橋本政権まで、小渕政権になって、風向きはちょっと変わったので、心配になってしまう。ほんとうは小渕さんにまだ生きていただきたかったのですけれども。それから、自由貿易地域についても、シンガポールとは、要するに農産物が全然ないものだから、ようやくだけれども、韓国とはおそらく無理だろうし、だから、東アジアに自由貿易地域というのを日本がイニシアチブといっても、どれだけとれるのか難しいなという感じはしました。
それで、さっき秋山さんの言われたこと、それから、櫻田さんの言われたことに関連するのですけれども、香港に『アジアウィーク』というアジア問題の専門雑誌が出ているのですが、これが毎年5月の号で「アジアの実力者50人」というのをやっているのです。もちろん1つの雑誌のいわば適当なランクづけだと言えばそうなのですけれども、今年、日本の森首相というのが何位かというと、17位なのです。その上には、もちろん韓国の金大中大統領、それから中国の江沢民国家主席、朱鎔基首相、それから台湾の陳水扁総統、シンガポールのゴー・チョクトン首相、マレーシアのマハティール首相も、要するに政治家はみんな上にいるわけです。日本ではソニーの出井会長が森さんよりも上にいるのですけれども、そういう状況。