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これを守らなければならないとみんなおっしゃっているのですけれども、これこそご心配ないと思います。日本人は必ず無意識のうちに日本人らしさを守るということを確信を持って発言します。全く問題はないのです。

問題があるのは、その日本人らしさの説明を第三国の人にしていないということ、あるいはすることができないということなのです。これにはいろいろな問題があります。もちろん言語の問題があるのですけれども、憲法の問題では「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」と言いながら保持している。すなわち、建前と原則は相反するものがいっぱいあるのです。憲法9条だけではないのですけれども、二枚舌の国民は信頼できないということになってしまうのです。原則をとるのは日本人らしさではないですから、ちょっと困ることなのですけれどもね。

したがって、日本人はどういうふうにやるかということのほうが、日本人らしさがあるのです。確かにすべての場合にこうなのだということを言えないのではないかという悩みはあると思うのです。日和見主義という傾向は非常に強いですね。規則の国ではなくてケース・バイ・ケースの国なのです。原則のない国なのですから、法律は一応の建前なのです。法の国ではなくて感情の国なのですよ。人の根性、人の人情が法律よりも非常に強い国なのです。それは日本人の魅力であり、非常にアイデンティティとしてはっきりしているのですけれども、説明するのがなかなか難しいのです。説明がもっとうまくできればいいと思いますけれどもね。

ただ、国民がだれ一人も触れていない問題もあるのですけれども、それは戦争の責任なのです。これはアジアに近づくとなればどうしても避けて通れない問題だと私は思うのです。我々はこの間、沖縄へ行ったのですけれども、残念ながら、1つ見るべきところを見なかったのです。それは平和の礎です。この席にだれかご覧になっていない人はいらっしゃいますか。23万人の名前が石に描かれているのです。それは主に日本人ですけれども、1万4,000人のアメリカ人の名前も入っています。これは全部英語ですよ。片仮名じゃないのです。とってもきれいに英語で描かれているのです。これは彼ら(沖縄人)はおそらく5年間アメリカの記録などを調べて、一字一字丁寧に確認しながらその石に描いていったのです。世界のいかなるところを探してみても、戦争で戦った敵の尊称のあらわれとしては、これ以外にないのです。残念ながら、日本本土の人たちには、どうもその気持ちがあまりないという感じです。

 

 

 

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