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実は私、きのうまでアジアの国を回っていたのですけれども、よっぽどマレーシアとかフィリピンのほうが考えています。よっぽどこういう国のほうが海洋法とか海洋国家についてどうあるべきかに猛烈なエネルギーを使って議論している。

日本は残念ながら、行政改革の一環で、たしか、海洋問題審議会かなにかが廃止になったと思いますけれども、そういう意味ではこのテーマで物を考えると、日本はどんどん海洋国家でない方向に、目をつぶっているような気がします。例えば1つのテーマとして、海洋法のイメージを海洋国家日本としてどう打ち出すのか。答えは仮に書かないにしても、こうした問題意識をぜひ持ってもらえないのかなというのが一つです。

それからもう一つ。いろいろ考えてみますと、海洋国家日本というのをもうちょっと限定すると、「アジア海洋国家日本」ということなのかなとどうしても思ってしまうのです。これは別に対中国ということではないのですが、国家のありようを考えて、世界史的に何か大きな貢献をしていこうとすると、どうしてもアジアでは大陸軸に中国があるのです。太田大使のこの地図を見ていてもつくづくそう思うのです。これは軍事的に対決するとか、中国と覇を争うとかいうことではなくて、構想の競争ではないにしても、違う面からの構想の提示ということにやはりなるのではないかなと。中国はもちろん最近、スプラトリーに非常に興味を持っているのは間違いないのですけれども、しかし、中国が海洋国家だとはとても思えない。

そういうふうに考えますと、中国との関係で「アジア海洋国家日本」の構想という何かイメージを持ってもいいのではないか。これは、最終的に太田大使が言われたように中国も取り込んで、例えばASEAN+3ということに何ら対立する構想でもなく、非常に興味を持っている話なのです。ただ、しかし、中国と日本というのは、もしアジアで国家構想を考える場合に、あるいは世界に対し何か物を考える場合に、違う発想だと思うのです。そこを意識する必要があるのではないかということです。

もう一点だけ、これは大きな問題というわけではありませんけれども、太田大使の話の中で、軍事力、富から知識への転化あるいは発展というようなご指摘があったかと思いますが、私は、人間の社会、人間のつくる世界においてどうしても国というものを考える場合に、もちろん太田大使も無視しているとは思わないのですけれども、軍事力とか富とかいうことを無視して議論することは不可能なのではないか。軍事力あるいは富をいかにマネージして、もちろん知で勝負というのはいいのですけれども、軍事力とか富というのをいかにマネージするのかというのが大変大きな課題で、特にこのブレジンスキーの図を見ていると、つくづくそう思うのです。

 

 

 

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