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今の議論に関連して申し上げました。では、次のテーマに移行したいと思います。櫻田さん、よろしくお願いします。

櫻田淳 櫻田です。今までの議論に関連したことをお話したかったのですが、ただ今、伊藤理事長の方から色々とおっしゃって頂きましたので、私は、これ以上、申し上げることはしません。ただし、次のことは申し上げます。

日本の「近代」のイメージというのは、「海」と大分、重なり合うところがあります。一例としては、司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』であるとか『坂の上の雲』です。とにかく何かをやれば実績がでるのだという信念が、国民の中に共有されていた時代だということがいえると思います。

ですから、この「海洋国家・日本の構想」を考える前に、「海洋国家・日本の精神(スピリット)」の何たるかは、きちんと確認しておいたほうが良い。今年一月の『中央公論』に東京大学の北岡伸一先生が、日本の価値は何かといったときに、「進取」と「開国」だとお書きになったことがある。私は、北岡先生の議論に賛成します。今の日本の国内状況を考えると、私は、この「進取」と「開国」の価値を、きちんと確認することは、諸々の議論の出発点ではないかと考えています。

ところで、現在の国内情勢を前にすれば、この「進取性」と「開放性」の価値が重んじられているかといえば、かなり疑わしいところがある。教育の場というのは、その典型的な空間みたいなところがあって、今や、何のための教育かが判らなくなっているところがあります。「進取性」の価値が大事だということであるならば、現在の余りに画一的な教育のありようは、やはり奇異なわけです。先日、読売新聞が「教育改革提言」というのを出しましたが、こういうことは、色々なところで大いにやって頂いて、海洋国家に相応しい「価値」の何たるかについて、合意を作っていくことが大事なことでしょう。こういうことをやった上でなければ、「海洋国家・日本の構想」が何のためのものかということは、絶えず問われることになるでしょう。しかも、その問いに答えられなければ「構想」自体の性格も暖昧なものになるでしょう。「海洋国家・日本の精神(スピリット)」の確認は、その意味でも大事なことだと何度も唱えないわけにはいきません。

加えて、「海洋国家・日本の構想」を考える前に、「構想の伝え方」という点には、十分に注意する必要がある。

 

 

 

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