まず、日本は何をなすべきかというところで、世界秩序レベル及び地域秩序レベルと2つに分けられたのは、非常にわかりやすく、またかつ具体的で現実的だろうと思います。世界秩序レベルでは、知的なものと、経済的なものとが挙げられています。この南北の安定に関しては太田大使が言われるとおり経済的貢献しかほかにないのかなと私も思います。一方、知的なレベルでは、欧米の文化・文明が世界を制しているという状況はここしばらく変わらないとなると、日本の場合にはなかなか智という分野で主導権、あるいは先頭を切ることは難しいのではないかと思っています。これは感想にすぎないのですが。
2番目の、地域レベルで、では、どうするかという点で1つ提案を具体例で述べさせていただきます。最後の海洋国家日本の貢献で、漠然と西太平洋と言わせていただきますが、その地域における海洋の自由利用の確保というテーマがあるのではと考えます。伊藤理事長がおっしゃいましたが、まさに日本は海洋を多重的・多面的に利用してきました。そこでどの国、どの民族でも自由にそれが使えるという条件、状況を確保するのに、日本は単に軍事だけではなくて、あらゆる政治的及び経済的な面で貢献して行くべきではないかと思います。例えば政治では安定を高めるための対話とか、あるいは先ほど太田専務理事が言われましたように、南北間の経済的安定、格差をなくすことによって安定を保つというような方法もそれには含まれるでしょう。
ただ、もちろんこれには難しい問題があります。言うまでもないことですが、排他的経済的水域の問題とか、領土の問題とか、日本でもいろいろ抱えております。しかし、ともかく海洋をどの民族でも自由に使えるという目的にあらゆる努力を先頭を切って行って、リーダーシップを発揮するというのが、私は、日本にとって少なくとも半世紀はこの方法が有効ではないかと思っています。その場合、日米安全保障条約のアメリカとの関係はもちろん重要なのですが、それだけではなくて、東アジアの立場も重視した、あるいは逆に言えば、そちらの側に立って、ある面ではアメリカと渡り合うぐらいのことをして、この西太平洋の自由利用というのをやったらいいのではないかと考えます。今回の3回目では、世界秩序と地球秩序に何か具体的な案を出さなければならないということですが、これが私の提案です。
次に質問ですが、太田大使が世界秩序レベルのところで、イランを例にとって、西欧化ではない近代化を望む国があるとおっしゃられました。西欧化という定義が難しいところがありますけれども、近代化というと、例えば政治的なシステムも技術も、ほとんど西欧が生み出したものであって、それは価値観なども伴うので、それを超えて西欧化ではない近代化を行うというのは可能なのかという疑問に、お答えしていただければと思います。