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私の提言というのは、日本がイニシアチブをとって、ASEAN+3を軸に東アジア協力体制を強化すべきであるということであります。もちろんできることからやるべきでありまして、こういうアイデアが通貨経済危機を契機に出てきたので、まず金融面でのそういう動きが始まっている。チェンマイ・イニシアチブというのを皆様ご存じかもしれませんが、本年の5月、ASEAN+3の大蔵大臣会合で、関係国間の二国間の金融協力取り決めのネットワークをつくろうということが合意されました。とりあえずはスワップ取り決めのようなものだと思います。

いずれ将来はかかる動きを自由貿易地域にまで拡大をすべきではないか。東アジア地域に日本のイニシアチブで、開かれた多角的な金融貿易経済協力体制を構築すべきではないかということであります。この構想を推進するに当たっては幾つか配慮すべき点があります。1つは、アメリカとの関係であります。先ほど申しましたように、アメリカはEAECに当初反対し、アジア通貨基金構想にも反対しました。いろいろ理屈は言っていたけれども、結局は、アメリカが自分の息のかからない地域協力は認めないということだと思います。

日本は、したがって、アメリカに対して、別に日本がこういうことを提案するからアメリカから離れるわけではない。日米安保条約というしっかりした基軸があるではないか。しかも、日米安保体制というのは、今やアジア・太平洋の安定のための公共財にすらなっている。ここをしっかりさせておけば、多少日本が地域協力で自主的なことを言ってもいいではないか。むしろそれは日米関係にとって健全なことではないか。もし日本人の間に対米従属感というのがいぜんとしてあるとすれば、こういうことをやればそういう感じも薄らぐのではないかといったことをアメリカに言うべきだと思います。

第2に配慮すべき点は中国との関係であります。21世紀の東アジア情勢で最大のかぎは中国の動向であります。中国が地域大国への道を歩むのか、どこまで覇権主義的になるのかは、この地域の最大の関心事の1つであります。日本としては、中国が少しでも開かれた協力的な姿勢をとるように働きかけるべきで、今までも働きかけてきた。いろいろ問題はあるにしても、日本が年2,000億円にものぼるODAを供与しているのも、そういう考えに基づいているわけであります。

 

 

 

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