海洋が古いという点については、必ずしも海洋にとらわれずに、姿勢の問題である。すなわち海洋国家であるということは世界の新しい秩序づくりに貢献することが日本の国益であると考える、開かれたメンタリティーによる開かれた国益の追求を意味するという議論であったと思います。
次に、日本のアイデンティティの第2として、「非欧米で最初にかつ自力で近代化した国」ということが言えるのではないかと思います。これは3つのことを意味すると思います。
第1は、日本は欧米の国と同じく近代化した国であるという点であります。つまり、近代国家としての日本は欧米と多くの共通点を持っている。詳細は省略いたしますが、例えば日米は価値観をシェアするということが言われますが、それはそういうことを言っているのだろうと思います。
第2は、日本は近代化したけれども、欧米の国ではないという点であります。これは、近代化は西洋化あるいは西欧化と全く同じではないということを意味します。今までの議論でもよく出ましたけれども、我々日本人はともすると、日本はとことん西欧化してしまった、戦後はアメリカ化した、魂を失った、つまり和魂を失ったという見方が強いわけですけれども、外から見ると違います。特に途上国の目から日本を見ると、私も韓国、サウジアラビア、タイに勤務いたしましたけれども、これ等の国々は日本が完全に西欧化したとは思っていない。日本らしさを失わずにどうして近代化ができたのだろうかという見方をしている。これは途上国だけではなくて、一時、日本異質論というのが非常にはやりましたけれども、近代国家と言うけれども、日本は違うという議論は日本が西欧化していないことの指摘であります。ウォルフレンやプレストビッツがこのような議論を展開しました。
この点で言うと、私が思い出すのは、日米構造協議の際、日本側の代表であった渡邊幸治外務審議官が述懐しておりましたが、同じ市場経済、資本主義と言いながら、日本のシステムとアメリカのシステムは、よくもここまで違うものだということでした。こういう点が実は、後で触れますけれども、南の国から見ると日本のアセットなのであります。
「非欧米で最初に近代化した国」の第3の意味は、日本は近代化しようとしている多くの非欧米の国々の先輩、先達であるということだと思います。言うまでもなく、産業化を中心とする近代化は多くの途上国のアスピレーションであります。日本は、近代化が西欧、欧米の専売特許でないということを示した。