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2. 「海洋国家日本の構想:世界秩序と地域秩序」

 

(1) 問題提起:太田博メンバー

 

太田博(問題提起者) 太田でございます。今、伊藤理事長から、3年間の総括というお話がございましたが、私には大変荷が重くて、果たしてご期待にこたえられているかどうか自信がございませんが、一応お手元に1枚紙をお配りしてございますけれども、それに沿ってお話をさせていただきたいと思います。なお、30分という時間の制約の関係上、かなり乱暴な議論になりますけれども、お許しいただきたいと思います。

まず、日本が何をなすべきかに入る前に、もう一度アイデンティティの話にちょっと戻りたいと思いますが、これについてはいろいろな議論がございました。日本のアイデンティティは和であるとか、自然の重視であるとか、平等社会であるとか、勤勉であるとか、言ってみれば文化・文明的な議論、あるいは日本人論的な議論が多かったと思います。ただ、このプロジェクトの趣旨からいいますと、やはりアイデンティティというのは国際政治あるいは世界史の展開という視点から考えるべきではないかと思います。

そこで、まず、アイデンティティの第1として考えられるのが、「北東アジアに位置する四面環海の海洋国家」ということでございます。今までの議論で、日本が海洋国家であるということについてはいろいろなコメントがございましたけれども、大きく分けて2つあったと思います。1つは、日本は海洋国家というよりもむしろ島国ではないか。鎖国もしたし、メンタリティーは内向きである。リスクはなかなかとらない。特にイギリスとの比較においてそういう議論が行われました。第2のコメントは、海洋というのはもう古い。空もあるし情報もあるではないかというコメントがあったと思います。

第1の、むしろ島国ではないかという点につきましては、地理的に言えば、日本が四面環海であることは間違いない事実である。それから、経済的に、資源ひとつを考えましても、日本は海を通じる開かれた交易が絶対に必要である。そういう点からいいますと、日本が海洋国家であることは疑いのないところと言えると思います。ただ、先ほどもご紹介したように日本人のメンタリティー、姿勢が問われている。特に北東アジアに位置する海洋国家という点に関しましては、後で触れますが、伝統的な大陸国家である中国との対比で、海洋国家日本の姿勢が問われることになると思います。

 

 

 

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