日本において、このような問題の立て方とその解答の自覚的な追求がとくに必要かつ貴重であると考えられるのは、歴史をつうじて日本の指導者、エリートそしてその背後にいる国民一般までが、これまで概して内向きであり(それは日本が島国であることを反映しており、それはそれなりに独自の文化や文明を純粋培養させることに寄与してきたのではあるが)、外に開かれた部分を軽視してきた傾向があるからである。ならず者であった航海者や海賊や貿易商人を借しみなく後押ししたイギリスと、和冠や八幡船や日本人町を結局は切り捨てた日本の違いがあるといえよう。イギリスは「海洋国家」として世界に雄飛したが、日本は「島国」として鎖国のなかに閉じ込もった。内に向いた部分と外に開かれた部分が、日本では接触を欠き、そのために国際社会とのかかわり方についてバランスのとれた判断がしばしば失われがちである。外の世界に関心を払おうとせず、世界の相互連関のなかにおける自国の役割の自覚さえも欠落しているかのようにみえる今日の日本は、これまでと同じ過ちを繰り返しつつあるようにみえる。
本セミナーは、このような問題意識を踏まえつつ、各界から幅広い人材の参加を得て4年間にわたり「海洋国家日本:その文明と戦略」をテーマに、多角的観点から徹底的に討論する機会を設け、さらにその成果を広く国民一般に公開し、国民意識の啓蒙に資することを目的とする。
II:概要
1. 実施期間
セミナーの実施期間は4期4年度とし、1998年4月にスタートし、2002年3月に終了する。
2. 主催・協賛・助成・後援
(1) 主催:財団法人日本国際フォーラム
(2) 協賛:読売新聞社
(3) 後援(ただし第4期のみ):外務省、運輸省