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特に海底調査研究をやろうとすれば大変困難なことがあります。それは、もちろん資源の問題や軍事的な問題にからむからであります。今日、只今、旧原子力船「むつ」、現在は、海洋地球研究船「みらい」という世界最大の研究船になっていますが、これが戦後、日本の海洋研究船として初めてオホーツク海に入っています。これが千島列島を通過するときには、シービームといいまして、海底をはかる装置は使わないという約束で、ロシアの監督官の監視下で活動しております。また、我々は、太平洋の赤道域でエルニーニョなどの観測のためのブイを浮かべたりいろいろしておりますが、他国の水域に入るときにも非常に煩雑な手続が要るということでございまして、まさに海は分割されているという感じが非常に強いわけです。

先ほど鄭和の航海について、今、アフリカの遺跡から当時の中国の陶磁器が出土して、その活動がアフリカ大陸奥地にまで及ぶ大変な海洋国家であったというお話がありましたが、そういう意味では多分今から数百年、あるいはもっと経って世界中の遺跡を発掘すると、ソニーやらトヨタやらの製品がいっぱい出てきて、日本も大変昔は海洋国家であったなというようなことが言われるんじゃないかと思うほど、わが国の海外進出は、進んでいるわけですから、言葉の定義にもよりますが、現在の日本は立派な海洋国家といえるのではないか、そういう感想をもっております。

伊藤憲一(進行司会者) どうもありがとうございました。

それでは、竹内さん、お願いします。

竹内佐和子 きょうはおくれてまいりまして失礼しました。ベネチアのあたりから話を伺いまして、先生のお話を伺って、私なりに先生がおっしゃりたかった海洋国家のイメージと21世紀の海洋国家がどこが違うのかということを考えてみたので、試論というか、これで通用するかどうかということなんですが、先生がおっしゃられた海洋国家の意味は2つあったように思います。1つは、交易圏というか、海を乗り越える力が1つと、もう一つは、乗り越える海をどう活用するかというのは2つの意味を持たれたと思うんですが、私は一応海を乗り越えるほうの定義をとっていきますと、17世紀中世からの海洋国家の特徴というのは3つぐらいあるのではないか。1つは、テリトリーをコントロールするという感覚。2つ目は、情報をつくるというか、あるいは文化輸出の面、すなわち豊かな生活を人に影響を及ぼすといいますか、そういう力。3番目は、さっきハイリスクの話が出ましたけれども、コミッションビジネスができるかどうか。

 

 

 

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